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ミケちゃんはおチビちゃんの膝の上にいるわたしに手を伸ばしてきて、無防備に晒しているお腹をわしゃわしゃしだした。
うん、あのね、いまのわたしは人間じゃなくて仔猫ですからね、前世のわたしが猫のお腹を本猫の了承なしに触った経験あるかないかと問われれば答えは「ある」ですしね、なのでいちいち文句を言うつもりはなかったんですけども。
そろそろ軽く噛みつくくらいは許されるんじゃ――あ、でも噛みつくのはやめたほうがいいかな。人間でも犬猫でも噛まれた傷は口内の雑菌がどうたらこうたらであまりよろしくないことになるケースがあるんじゃなかったっけ。いや、そんな本格的にがぶっとやる気はないけど。甘噛みよりは少ーし強めくらいで。でも万が一で深刻なことになる可能性があると思うとちょっとねえ。魔法がある世界でも噛み傷からの口内細菌感染の脅威度って同じなのかなーというのは少々気になるところだ。
感染の危険性が、という観点からいうと爪で引っ掻くのもやめといたほうがよさげ? 相手はお子様だしね。やっぱりリスクを考えちゃうとねえ。
そういえば、ジルドナート青年の顔面の怪我、ベンチに座ってお子様たちとだらだらしている間にも徐々に回復が進んでいて、少なくとも顔に貼りつけた布で隠れず見えている部分については、当初の生々しさはだいぶ薄れている。ちょっと休憩~程度の時間でここまで治っちゃうものなんだ……魔法すごい。この感じだと、医師免許を得るためには一定レベル以上の治癒魔法必須とか、そういうのありそうじゃない? 魔法使える人の総人口に占める割合によっては、医療関係とか、技術が完全に魔法前提な進歩のしかたしててもおかしくなさそうだ。
「ミケはウルーシュカの加護が欲しいんだよねー」
そう言ったのは小学校中学年くらいの男の子。それに対してミケちゃんは即座に「違うし!」と否定した。その本人直々の否定とほぼ同時に、推定年齢中学年程度の女の子からも指摘が入る。
「違うよ。ウルーシュカの加護が欲しいんじゃなくて、ウルーシュカの加護が貰えないほうがいいんだよ、ミケは」
加護っていうのはわたしにはわからないけど、とりあえずお腹をわしゃわしゃするの一旦やめてくれないかなーミケちゃん。温厚な猫でもそろそろ怒るよ。
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