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わたしの両前足を掴んでばんざーいのポーズを取らせながら、おチビちゃんの一人が可愛らしい声で「あのねぇ」とジルドナート青年に話しかける。この年頃の幼児なんて猫と同じでなにやっててもどんな悪ガキでも全員漏れなく可愛いからね。
「えっとねぇ、内緒なんだけどね」
ゆらゆら身体を左右に揺らすおチビちゃんと一緒にばんざーいのまま揺らされるわたしです。さっきから子どもたちの手から手へと渡され撫でくり回されてます。愛玩動物やるのもけっこう大変だと思い知りました。
いいけどさー。可愛い可愛い言われるのはちょっと気分いいし。まあ猫なんて可愛くて当たり前ではあるけど、褒められると嬉しいでしょ、単純に。
それはともかくおチビちゃんの内緒の話である。内緒と言いつつまったく声を落とせていないため、この場にいる全員に筒抜け状態なのはご愛嬌。
おチビちゃんに合わせて身体を傾け耳をおチビちゃんの顔に近づけたジルドナート青年に向かって、全然潜めてない声でおチビちゃんは言った。
「ミケはねぇ、お金たくさん貯めて、それで、えっとね、剣を買うんだって」
これ内緒だからね、と最後に駄目押しするおチビちゃんだけど、子どもたちはおろか、たまたまこのタイミングで近くを通りがかってただけの人にもおそらくばっちり聞こえてたと思われます。お子様の甲高い声ってよく通るよね、うん。
「おっ前、内緒って意味わかってないだろ……」
ミケちゃんは恨みがましい声で文句を言うけど、相手がこのくらいの年齢の幼児じゃあねえ。内緒話を本当に内緒にとどめるのなんて期待するのが間違いってもんでしょ。
「あのね、ミケはウルーシュカの迷宮に入りたいんだって。それで一度入口まで行ったんだけど、でも戦えない人間は入っちゃダメだって言われたから、それで武器が欲しいの」
これは年長の女の子。ミケちゃんの内緒の話、たぶんまったく内緒にできてないやつー。
「なるほど? それでとりあえず剣があればいいだろって?」
ジルドナート青年は困ったような苦笑を浮かべた。
「残念だったな、ここいらの迷宮は年齢制限ありなんだよ。武器を持参しても、仮にお前がとんでもない剣の達人だったとしても、ガキのうちは入れてもらえません」
「……そんなの、探索者ギルドが勝手に言ってるだけじゃねーか。守る必要ないだろ」
「ギルドもだけど、それよりも御城主様の御意向って話だぞ、たしか。偉い人には従っとけ。つーかどこの土地でもお前くらいの年のガキが迷宮に入りたいっつったら止めるんだよなー普通」
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