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ちょっと厚めの紙に描かれた、馬と老婆と、それを遠巻きに見守る老婆の家族らしき人々の絵。老婆は地面の上で、尻餅をついた、あるいは即座に立ち上がれないままに馬から逃げようと後ずさるような姿勢になっている。見開かれた目、持ち上げられた片手は馬を指差す形、この絵を手がけた人間の意図した老婆の感情は間違いなく驚愕だろう。
「これがニフニの帰還図ってやつなー。元になった絵はいまはアーウィン‐クロニアス連立王国の王宮にあって、これはその絵を真似したやつのさらに模倣。ちなみにこの中でアーウィン‐クロニアス連立王国の人ー?」
ばらばらと子どもたちが手を挙げる。小学生なら中学年くらいだなーとわたしが思っていた子たち二人、「行ったことねえけど」と言いながらミケちゃん、それから幼稚園児くらいのおチビちゃんのうち一人――と思ってたら、残り二人のおチビちゃんも年上の子によって手を挙げさせられたので三人ともアーウィン‐クロニアス連立王国というところの人らしいです。
行ったことないというミケちゃんは、国籍が連立王国の親御さんが国外にいる間にできた子で、子ども本人は帰国した経験なしパターンかな。だとすると十年以上国外に出たままなのか、ミケちゃんの親御さん。
小さい子の相手をするお兄さん口調でお子様たちに語りかけているのはジルドナート青年である。ベンチに座って子どもに囲まれながら絵を見せている図は完全に学校の先生……にしてはちょっと若いけど。子どもたちに訊ねながら彼も片手を挙げていたので、ジルドナート青年もアーウィン‐クロニアス連立王国出身であるようだ。
バスケットの中でぐっすり眠っていたわたしが目を覚ましてからしばし、お子様たちにかまわれながら迷宮へ転移して消える探索者や逆に出てくる探索者を眺めていたところ、ジルドナート青年が迷宮から戻ってきた。
そもそもわたしはジルドナート青年が迷宮に入ったの知らなかったんだけどね、たぶんそのときは寝ていて見てませんでした。オーリ君やヴェルゼン様が何度か出入りしてたのは知ってるけど。まあ姿がないからジルドナート青年たちも迷宮の中にいるのかなーとは思ってました。
そしたらジルドナート青年が一人だけで戻ってきて、なんやかんやでいまはなぜかお子様たちの相手をしているのだ。
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