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わたしなら本当に大丈夫だと思うんだけど、人間の皆さんにそれを伝える術がないため、どうすれば猫がちゃんと転移できそうか問題にオーリ君以下揃って頭を悩ませている。
ほんと、仔猫がうっかり迷宮に入り込んでしまってすみません。でもねえ、わたしならたぶん普通に転移できるから難しく考える必要ないってばー。悩む前にまず一度試してみなよー。ちゃんと問題なく出入りしてみせるからさー。
うーん、意思の疎通ができないってほんっとうに不便。どうにかならないかなー、ならないよなー。
…………ここってファンタジー全開な世界じゃん? それなら、なにかの間違いで前世人間の記憶を保ったまま犬や猫に生まれ変わった先人がいたりして、さらには未来の同胞のために記録を遺していたりとかなんとか、そういうのが都合よく存在してたりしない? 動物の肉体でも可能かつ誤解なく伝わるジェスチャー集とかさー、そういう先人の知恵なんて都合よくどこかに眠ってないですかー? ないですよねー……。というか仮にそんな代物が都合よく存在したとして、記録手段が文字だった場合は内容を読めない問題が発生するのがオチだろうか。先人の前世がこことは異なる世界の日本人であった場合はその限りではないだろうけど。
存在するかどうかもわからない、というかおそらくほぼ確実に存在しない先人の遺産なんかより、いまはどうやってオーリ君たちに猫は普通に転移できますと伝えるかだ。
転移地点となる丸平の石が埋まっている場所、その真上一メートルちょっとほどのところには、銅色をしたなんか知恵の輪っぽいものが浮かんでいるように見える。金属の細い棒を曲げて四角にして、それらを複数繋げた、そんな形のものだ。もっとも、よくよく見れば知恵の輪には必須の切れ目が存在していなかったので、短い鎖と表現するほうが近い。
浮かんでいる高さ的に、オーリ君が転移してくる直前に地面の平たい石と一緒になって宙でぼんやり光っていたの、この知恵の輪もどきだと思われます。
察するに、迷宮に入るときの銅版と同じ立ち位置の存在が、この宙に浮かんだ銅の知恵の輪もどきなんじゃないかな。だから、迷宮から出たいでーすと思いながらこれの近くに寄っていけば、あとは不思議パワーで勝手に外に転移されるって感じでいけるんでは?
人間相手に言葉で意思疎通を図れない以上は、もうこれ手っ取り早いのは実演してみせることだ。幸い、わたしの胴体はオーリ君の手に確保されてはいるものの、おとなしく捕獲されていることで油断しているのか、その気になればすぐ抜け出せそうな緩い拘束である。
うん、これならやれそう。
頭の中でまだ見ぬ馬の神様のニフニとやらに向けてわたし迷宮から出たいですー!と念じながら、身体を捩ってオーリ君の左手から抜け出す。そしてわたしはそのままオーリ君の手を踏み台に、宙に浮かんでいる知恵の輪もどきに向かって跳躍した。
※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。




