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頭の上数メートルのところに溜まっている白くて長いお魚風なにかを観察しながら、あのへんからこっちが結界の内側なのかなー結界があるせいでこっち側には来られないんだーなんてことをほけーっと考えていたわたしにいきなり注目が集まった。
え、なに、どういうこと?
「でも、入ってはこられたんだし」
「たまたま、なにかの偶然で進入できたのかもしれないだろう」
「そんな偶然あるか?」
「ええと……竜は、リオニルはちゃんと問題なく出入りできていますよね?」
「竜は生まれたばかりでも人間の二、三歳児程度の頭はあるっていうぜ? 猫とは出来が違うんだよ、一緒にできない」
なんか微妙にディスられてる……? いや、ノーマルなキャットへの評価としては妥当ではあるのか? でもリオニルと比べて頭の悪い生き物扱いされるの甚だ遺憾なのですがー?
どうも、わたしが迷宮の外へちゃんと転移できるかどうかで皆さん悩んでいるらしいです。
なんで?
銅版迷宮の出入りってそんな複雑なものじゃないでしょ? ……ないでしょ…………?
だってわたし、銅版に顔近づけただけでぽいっとこっちに連れてこられたよ。合い言葉とかパスキーとかジェスチャーとか、そういうの特にななんにもなしでオッケーだったのに、なにをそんな悩む必要が……?
「オーリ様、銅版の進入条件が変化したということはあり得ませんか?」
「それはない、と思う。見ていた限りでは、猫は銅版に接触したと同時に転移した。だが、単なる接触が転移の条件となったのであれば、何人もが意図せぬ迷宮進入を果たして即座に異常に気づいただろう」
「ですよねえ……」
「昔、銅版迷宮内に羊やら鶏やら連れ込めないものかと試したって話ありますよね。非常時の退避先に使えないかと期待したが、転移できたのはごく一部のみで結局断念した、って」
「ああ、そういえば。あれ、転移できた一部ってのはなんで転移成功したんですかね?」
「聞いた話では、主が共にいたためではないかと推測されているそうだ。まず最初に主が転移を行ったのち、主人に特に懐いていた個体が消えた主を追おうとした結果、転移に成功したのではないか。つまりは、明確に銅版迷宮への進入を意図してはいなくとも、直前に迷宮内へ進入した者と共に行動することを望んでいるならば転移が行われるのではないか――と。正確なところは迷宮の創造主であるニフニに確認するしかないが」
オーリ君が説明する。
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