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あ、そうか。魔物の造形だと考えるとなんだあれになるけど、アート作品の部類だと思えば普通にありそうなんだ。四角形をいい感じに配置してそれっぽく見えるようにしましたーみたいな。そう思えば頭上でふよふようごうごしている謎の白いのたちもそれほど突拍子のない存在ではないように……いや、無理。
ただの四角い板の集合体っぽいものが地上数メートルの高さを維持していられるだけでとんでもない謎存在なんですよ、そもそも。あれ悠々と宙に浮かんでいていいようなものじゃないでしょ、どうなってるんですか。魔法が存在していて、小さな銅版からどこか別の場所へ強制転移させられるような世界で言うのもなんだけど、物理法則さん蔑ろにされすぎでは?
よくよく観察すると、同じ形の四角ばかりが並んでいるのではなくて、ほとんどは平たい板状の四角の中、列の途中に一個、立方体が混じっている。あれでしょ、あの立方体が核になっているっていうわかりやすいやつでしょ。あと、ほぼすべての四角は対面の辺同士が平行の正方形に見えるんだけど、一部、台形だったり平行四辺形だったりもっと歪つな四角だったりのちょっと変形した板がある。それらは他の四角が列ぶラインから少しずれたところに配置されているみたいで――。
たぶん、だけど、あの白いやつの集合体、わたしは最初蛇っぽいと思ったんだけど、正体は蛇じゃなくて長ーい魚を表現したものじゃないだろうか。ウナギとかアナゴとかリュウグウノツカイのような細長い形の魚。正方形の板が魚の本体で、変形四角の板が鰭を担当している感じの。うん、蛇よりも断然、魚っぽい。
……そんなふうにわたしが上の白い魔物を眺めている間に、オーリ君と探索者の皆さんの間でさっさと話し合いがなされ、結界は張ったので転移地点が占拠される心配は当面なし、よって一旦全員で引き上げても問題はない、という方向にまとまりかけていた。仮に魔物が総出で結界を崩しに動いてもすぐに消滅させられることは考えにくい、どうせすぐに人員をかき集めて本格的な探索に乗り出すので、そのときまで転移地点が魔物に占拠されることなく確保できていればそれでいい、ということらしい。
「ところで……」
探索者の一人がオーリ君の手の中にいるわたしを見ながら言った。
「猫、ちゃんと転移できますか……?」
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