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愛されキャットはじめます in 異世界  作者:
 

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10

 樽に詰められただ運ばれること……どのくらいだろう。けっこう長かった。トータル十数時間ぐらいにはなるのかな。

 あまりに長かったので、その間に樽の中の林檎をいくつか失敬してしまった。だって樽からの自力脱出無理だし、飢えと渇きをしのぐためには他に手立てがなかったんだもん。

 一応、樽の中からにゃーにゃー鳴いて助けを求める努力はしたんですよ。揺れのリズムや外から聞こえてくる声で判断すると明らかにいま人間の手で運ばれてる!ってときには、それはもう必死で呼びかけたものです。それで結果はどうだったかというと、変わらずイン樽のままなのでお察し。仔猫の肺活量は人間同士の話し声や周辺環境の騒音に敗れ去ったのでした、ちーん。

 樽の中でぶつかってくる林檎と格闘しながら声を張り上げたつもりなんだけど、猫の声ってそんなに聞き取れない……? それともわたしの肺が貧弱すぎ?

 そんなだから、途中からはもう諦めムードでひたすらしゃくしゃく林檎囓る虫もとい猫と化してました、ええ。

 わたしとボロ布と林檎の詰められた樽は、人の手で運ばれ、馬車で運ばれ、そしてどうやら船に乗せられたようだ。外からの音や揺れや人間の会話からの推測だけど、出航順予定がどうのこうの、波の高さがどうのこうのというのが漏れ聞こえてきたので、おそらく船なのだろう。かつて体験したことのないようなふわふわした変な揺れが伝わってきた。船(推定)ってこんな感じなんだ、へー。

 人生猫生合わせて初の船旅を(樽の中で)楽しみながら、わたしは心穏やかに林檎を囓り、お腹がいっぱいになったらひたすら惰眠を貪り、起きたらまた林檎を食べた。他にできることがないとも言う。林檎美味しいです。毛が果汁でべたつくのだけはちょっとアレだけど。林檎ってこんな水分量多かったんだ。

 そうこうしているうちに船は目的港に到着し、樽は陸地に降ろされて人力と馬車で運ばれ、そして――。


「――あのね、注文したのは林檎なのよ。猫の林檎漬けじゃないの」

「いやそれ俺に言われても困るんすけど。言われた荷物運んできただけなんで……うわべっとべと」

 ですよねー。納品された樽を開けたら中で猫が林檎食い荒らして汁まみれになってましたー、ってなったら困っちゃいますよねーーー。

 マジすみません、見知らぬどこかの厨房のおばさまと、配達担当のチャラそうな外見のお兄さん。文句は仔猫の混入を見過ごしたまま樽を出荷した人にどうぞ!

 樽の中を見下ろしながら困惑する人間二人を後目に、わたしはぴょんと地面に飛び降りて、脱兎の如くその場から走りだした。わーい、久しぶりの樽の外だー。

 あ、樽の上のほうの林檎はアレだけど、下の林檎は無事なので! 本当にすみません、ごちそうさまでした!


※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。

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