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出現したと思った壁っぽいやつ、即消えて見えなくなったんですけど、これでちゃんと正しく結界できてるんです? いえ、断じてオーリ君を疑っているわけではなくて、結界張る前後で特に変化がなくてちょっと存在が信じられないといいますか。もっとこう、空気が劇的に変わるとかなんとか、ないんだなーと。
まあ探索者の人たちの反応を見るに、結界ってこういうものらしいです。
薄暗い中でちゃんと確認もしづらいんだけど、この場にいるのは全部で十人、オライセンさんが送り込んだ人が全員揃っているようだ。
どうやら彼ら、迷宮に進入した人間がまず出現する地点――石畳の中に埋まった平たい石の上――の確保と周囲の確認のために来たはいいものの、進入からしばらくすると徐々に寄ってくる魔物が増えだし、あれこれ思ったよりも魔物多くね?となったそうな。
一度迷宮から出てやり直す場合、寄ってきた魔物が転移地点に居座っていたら再進入時が大変になるのでそれはなるべく避けたい、じゃあとりあえずここで待機して後続の人員が来るまで粘るしかないか、本格的な調査が始まれば頭数の投入でどうにでもなるしな――と覚悟を決めかけていたところにいきなり仔猫が出てきて、その仔猫を追ってオーリ君もやってきた、と。まあわたしがうっかり迷宮に入ってしまわなくても、オーリ君はここに来てたと思うけど。
彼らの話を聞いていると、思っていたよりはちょっと厄介な状況で行動に悩んではいたけれど、本格的にどうこうなるほど深刻というレベルではない、くらいの感じだろうか。寄ってくるという魔物も対処自体は問題なくできる程度のものみたいだし。
ちなみに「何体か倒してみたんですがね」と見せられた魔物の遺体……というか残骸は、なんか白い……なにこれ? ぱっと見で連想したのは紙粘土、それと前世の人間時代に台所で使っていた珪藻土の水切りボードだ。白くて、力を入れればぱきっといきそうな感じの、薄い板状の物体。それを適当にべきばき折ってたたんで細かい部分は捨てた成れの果て、みたいな代物が元は動いて人間を襲ってくる魔物だったそうです。いったいどういう魔物で……? 残骸から生前の姿がまったく想像できないんですが。叩き壊した紙粘土細工かなにかの間違いでは……?
灯りのせいでここに寄ってきているんでしょうねぇ、と探索者たちの中の誰かが苦笑いするけど、じゃあこの破壊された紙粘土細工の末路みたいなやつ、生前はちゃんと光を感知できる生き物だったんだ……。
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