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「〈我が君に希い、祈りを捧ぐ――〉」
左手にわたし、右手にリオニルで両手が塞がったまま、オーリ君はなにやら唱えだした。
「〈御身の威の一欠片、此の地に賜らんことを〉」
その文言が終わると同時に、前方になにか薄ぼんやりした白色に光るものが現れた。前方、三、四メートルくらい先の石畳に、発光する塗料で描いたように真っ直ぐ一直線。左右にも同様に、光る線が出現している。いまのわたしからはオーリ君が邪魔になってしまって身体を捻っても見えないけど、おそらく後ろも同じく。
ぼんやりした光が強まり、次の瞬間、地面の線から上方に向かって、白く光る線が急激に伸びたように見えた。線、糸、紐、リボン、帯、なんかそういう長細い感じのもの。あるいは触手みたいなうねうねしたやつとか。
それは一瞬の錯覚で、実際のところ上へ上へと伸びていたものは植物の枝葉だった。白い光で形作られた、棘を持つ蔓だ。オーリ君の手にある紋様の蔓植物と同じ形。地面の線から伸びたそれらが一気に上に昇って壁となり、そして数秒ほどで消えて見えなくなった。
そして周辺、光る蔓でできた壁の消えた向こう側から、カタカタと乾いた音がする。だからカタカタってなんの音。
「――しばらくは保つはずだ。ニフニの干渉がなければおよそ二日。この規模のものならば見咎められることはないと思う」
オーリ君が探索者の人たちに説明する。
あ、つまりいまのが魔物除けの結界というやつ?
「助かります」
「あー、これで外に出られる」
「外から増援来るまでずっと待機かと思ってました」
「本当にありがとうございます……!」
探索者さんたちが口々に言う。
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