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でもまあ、勢いには正直ひえっとなったし、あと結界とか障壁とかはどんなものかわからないのでなんとも言えないけど、灯りが欲しいというのはめっちゃよくわかる。照明は大事です。オーリ君灯りが出せる人って認識されてるんだ……とはちょっと思ったけど。
「治癒効果上昇の結界は私よりヴェルゼン様に頼むほうがいい。いま外においでだ。他は引き受ける」
オーリ君、飛び立とうとしたところを制止されてご機嫌斜めなリオニルに腕をがじがじやられてるんだけど、大丈夫なんだろうか。さすがに甘噛みだと思いたいところだ。
「ここに魔物除けお願いできますか。思いの外、寄ってくる魔物が多いもので、退くべきか待機すべきか悩んでいたところで……。一度退いたら次に入ってくるときに難儀するのが見えていますし、どうしたものかと」
「それほど多いのか」
「最初は違ったんですがね……。入ってしばらくしてから、ひっきりなしに寄ってくるようになって。凶暴なのは少ないんでまだマシですが。いまも上、いるでしょ」
オーリ君と話している二十代半ばほどのお兄さんが指で頭上を差す。ここって銅版から入ってきた迷宮の中なんだよね? 上にあるのって空? それとも天井?
見上げた先はひたすら暗くてもはや空でも天井でもないただの闇だ。その闇の中からなーんか微か~に音が聞こえるようなー聞こえないようなー。カタカタ、みたいな音を立てるなにかが上にいるっぽい感じ。見えないけど。両耳がわずかな音に反応してぴくぴくする。カタカタってなに。なんの音。
クルト・ゼーネ゠オライセンさんの推測では月の出ていない月夜画の銅版の迷宮ってことだったけど、新月の夜でも星は出ていてよくないですか。ほんとになんにも光がない真っ暗なんですが。新月の図じゃなくて曇り空の夜の図の間違いなのでは。
そもそも建物が建ち並ぶ中に灯りゼロっていうのが不自然極まりないわけだけど。いまある灯りって探索者の人たちによる持ち込み品であるらしいランプだけなんだよね。足元を照らすだけならいいけれど……程度の光量なので、広範囲を照らすには向いていない。少し離れた先でなにかが動いていても、これでは音を頼る以外にはなかなか気づけないだろう。
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