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そこは石畳の敷かれた道だった。幅のある通りが交差する場所。その真ん中。
周囲を頼りなく照らす光の出所は、地面に直置きされているもの、人の手に持たれているもの、それぞれいくつもあるランプだ。街灯などは見当たらない。
距離にしてほんの数メートルほどのところにある建築物が、ほぼほぼ暗がりに沈んでいるような状態である。ほんとに暗いところ。ここに来る前に眺めていた銅版に描かれていたままの、ヨーロッパのどこかの街にありそうな建物の並びが続いているようだ。
わたしはほら、一応は猫に生まれているためなのか、前世の人間時代の感覚を思い出して比較すると暗所にはちょっと強いほうなんですよ。そのわたしでも暗いなー見難いなーちょっと離れたところ全然わかんないなーとなるんだから、普通に人間やってらっしゃる皆さんはランプの灯りが届いている範囲以外ほぼ見えてないのではないだろうか。
最初わたしがほけっとしていた場所、そしてオーリ君がいきなり出現した場所は、石畳の中でそこだけ丸くて大きくて平べったい石が埋まっている。ざっと直径一メートルほどだろうか。オーリ君が現れる直前ぼんやり光っていたのもこの丸平の石だ。宙で光っていたもののほうはよくわからない。いまはなにもないように見えるんだけど。
「え……、白い幼竜……」
「リオニルってまさか……」
ぼそぼそ囁き合う声は、わたしより先にこの場にいた人たちのものだ。やっぱり竜なだけあってリオニルって認知度あるんだ?
やがて一人が意を決したような顔で一歩進み出てきた。
「ベオラード・オーリ様……?」
確認する声音でオーリ君に問いかける。
オーリ君が首肯するや、前の一人を押し退けるようにして後ろから何人かが一斉に出てきて、口々に言いだした。
「灯り! 灯り出していただけませんか!? もう暗すぎて……!!」
「魔物除けの結界お願いします!!」
「魔法薬や治癒魔法の効果が上がるのも……!」
「防護障壁欲しいです!! 対魔法のやつ!!」
我先にと要望を伝えてくる彼らの勢いに、オーリ君は一瞬やや引き気味な顔になった。もっとも瞬時に表情を取り繕って冒険者――ここでの呼ばれ方は探索者?――の彼らに向き合うあたりはさすがとしか言いようがない。この勢いで迫って来られたらわたしなら逃げちゃうところだよ。ていうかオーリ君に胴体掴まれて持たれている状態でなかったら思わず逃げてたよたぶん。いまも全身の毛が逆立ってますよ。
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