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なんかねー、周囲からの視線がねー、リオニルは「わー、竜だー、珍しいー」で猫は「え、猫? なんで?」じゃないですかー。これ絶対みんなからなぜに猫連れって思われてますよオーリ君や。まあここの建物に来てからは石製オブジェ上の銅版のほうに注目が集まっていて肩乗りアニマルを気にする人は相対的に少なくなってたけど。
そんな感じでなんで猫が?という疑問の視線は少々感じるものの、飛び移ったオブジェの上から回収するための手が伸びてくることはなかったため、わたしは気兼ねなくオライセンさんが手にしたままの銅版に顔を寄せてみる。
本当に薄っぺらい板だ。厚さ一ミリあるかないかくらいで、これだとちょっとなにかあったらすぐ曲がっちゃったりするんじゃないだろうか。見てて心配になる。でもこれってニフニという神様謹製なんだっけ? ええと、習作? なら神様パワーで見た目より頑丈にできてたりするのかな。……そんなふうにはまったく見えないけど。
それで、これの中に入る?ってどうやるんだろう。呪文とか、鍵とか、許可証とか? なにかそういう特殊アイテムが必要なパターンですかね。この薄い板がダンジョンへの入口だと思うとゲームっぽくて少し楽しいです。
あ、ちょっと金属っぽい臭いがする。って当たり前か、金属板だもんね――そんなことを考えた瞬間、世界が変わった。
屋内とはいえ豊富な灯りでまったく不自由がなかったのが、瞬き一つ未満の間になんか薄暗~い場所へ。周囲に満ちていた人々のざわめきはふっと不自然に途切れ、空気も変わったような。
ええーーーー? なにが起こりましたか???
シームレスに周囲が一変したことに事態を理解できずただただ目を丸くするばかりのわたしの近くで誰かが言った。
「あ? 猫? なんで!?」
はい、猫です。なんかすみません。
さすがにこれはちょっとなにかやっちゃいけないことをやらかしちゃった気がするー。
「あ、やべ」
別の声がそう言うとほぼ同時に、わたしは地面から拾い上げられた。なんかわたしがぼけっと座ってた地面の部分と、その上一メートルちょっとくらいのところが、ぼんやり光っている。地面はともかく空中のはなにが光って……? いや、宙をふわふわ漂う魔法の灯りとかある世界だから空中で正体不明のなにかがぼんやり光を放っていても不思議はないのか。……ないのか?
謎の光は三秒ほどで唐突にきれいさっぱり消え失せて、オーリ君がその場に出現していた。肩にはリオニルを乗せたままだ。
え、いまどうやって出てきたの!? いきなりすぎてわけわからないんだけど。
「猫は!?」
「あ、はい、これどうぞ」
差し出されるわたしを受け取り、と思えばオーリ君はいきなり叫んだ。
「リオニル待て! 狩りじゃない!!」
声だけでは制止できないと考えたのか、がしっとリオニルの尾を掴む。
空飛ぶ生き物の面倒見るの大変そうですねー。
……というか、これ明らかにわたしが迷惑かけたやつではなかろうか。
なんかすみません、ほんとに。
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