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美味しい初水  作者: 氷斎
3/6

3話 怪しい水

「お母さん!ダメ!それ飲んじゃダメ!」


「どうしたのよ。沙優だって飲んだのでしょ?」


沙優が必死に飲むのを止めても、沙優の母は聞かなかった。

おじいさんから手渡された水を、そのままゴクゴクと飲んでしまった。


「違うの!おじいさんじゃないの!おばあさんなの!」


「何を言ってるのよ。ほら、沙優も飲みなさい」


沙優の母は沙優に水を勧めた。

沙優には、その水が夜の暗闇と混じって、黒く染まっているように見えた。


「……おじいさん!」


「ん?何かな?」


この老人には何か裏がある。

そう思った沙優は、昼はおばあさんだったのにどうして夜はおじいさんなの?などと直接質問することは避けた。

その代わり、今のこの老人が信用できるかどうか、テストすることにした。


「おじいさん、その水自分で飲んで」


「ん?別に良いが、沙優ちゃんの分が無くなるぞ?」


「いいから!飲むの!」


「もったいないだろう。これはあげるよ」


おじいさんは全然飲もうとしなかった。

沙優はだんだん身体がぶるぶる震えだして、普通の声が出せなくなってきた。

それは寒さのせいだけでは無かった。


「悪い人っ…こっ…この人わっ…悪い人っ…!」


「何言ってるの沙優。水をくれているのよ。どうしたのよ沙優、声が変よ。水を飲むと良くなりそうね」


「ええ。実際そうです。ほら沙優ちゃん、水を飲むといい、ほら」


おじいさんは水の入った筒を差し出してきた。

これは飲んではいけない。

そう分かっているのに、水を前にするとどうしても飲みたくなるのだった。

どうしようもなく、欲しい。

その形容できない感情に、沙優は押しつぶされてしまった。


「美味しかったわ〜。またもらいに行きましょうね」


「うん…」


親子とも水を飲んで山を降りた。

結局は体に害は無く、大丈夫だった。

それでも沙優は、やっぱり怖いままだった。

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