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未送信の手紙
それから一週間後、僕は机の上で一枚の便箋に向かっていた。
書いては破り、また書く。
やっと最後まで書き終えても、封筒には入れられなかった。
「あの夜から、ずっと君のことを考えている。
触れた肌の温もりも、耳元でこぼれた息も、全部がまだここにある。
だけど、同じくらい、スクリーンの中の君も消えない。
僕は、君を完全には取り戻せなかった。
それでも、あの夜の君は確かに僕だけのものだった。
ありがとう。そして、ごめん。」
書き終えて、封筒も切手も用意したけれど、ポストに入れることはできなかった。
そのまま引き出しの奥に押し込み、僕は蓋をした。
彼女がこの手紙を読むことは、一生ないだろう。
でも、書くことでしか、僕は彼女と別れられなかった。