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マジェスフィア協会支部

城壁の根元から始まる山道を進むと、森の厚い絨毯を越えた先に、石造りの橋がひっそりと立ち映えていた。その先の石壁には、マジェスフィア協会支部が広がっている。城門は隠れるようにして存在し、そこをくぐると広大な敷地が広がっていた。


 これは市長公邸の門が鉄製であるのに対し、支部の門はトンネルを想起させる構造に、強大な木柵が構築されている。堅固な城壁に囲まれた協会支部は、薄茶色の塔がひっそりと聳え立ち、その姿はどこか荒涼としていた。城壁には数多くの角が見受けられ、防衛塔が頻繁に配置されている。その風貌は、支部というより要塞に近かった。


 この建築物は、元々この山の頂上に存在していたのだ。城から一望できる絶景、あらゆる動きを監視するために城壁の二倍の高さに調節された天守閣。その広大な空間は、万一の攻撃にも頑丈な構造により威力を分散させ、城を護るつくりとなっていた。

 この要塞の収容人数はおよそ二千人を超え、その内部は小さな村さえも作り出すことができるほどの広さだった。


 ただ広いだけの城。この難攻不落の城にランディスが足を踏み入れたとき、本来ならば城を守るべき兵士たちは、黄色い骨へと変貌し、城の主は豪勢な玉座で干からびたリンゴのように命を絶っていた。


 手つかずの歴史がそうさせたのだろう。ランディスはその光景を目の当たりに薄っすらと笑みを浮かべると、この場を自らの職場と決めたのだった。


 それからいく年月が過ぎただろうか。今も協会支部の状況は、ランディスがこの場所を見つけた時からあまり変わりない。


 空虚に響く足音だけが、城内の壮大な広さを物語っていた。ここにはランディスを始めとする一名の機士、僅か数名の見習い、そしてその数に見合うだけの使用人しか存在しなかった。それがマジェスフィア協会の実情だった。慢性的な人手不足。彼等はある一つの内部紛争を境にめっきりと姿を消してしまったのだ。否、息絶えたといった方が適当だろう。彼等の最後。死に際は、深い霧の中で蒸発するように忽然と訪れたのだから。

 そして、今回、支部で唯一の機士である『トール・デュオクルス』が開発中のバスターを護送中に消息をたってしまった。この事態に頭を悩ませたランディスは、渋々本部に増援を要請したのだった

「いつ見ても広い城ですね」

 アレックスが天井を見上げて言った。

「全盛期は機士の育成の場として使われていた。なんたって広さだけが取り得の城だからね」

「これじゃあ働く人達も掃除が大変そう……」

 リリーが心配そうに言った。

「ハハッ。言っただろ。機士の育成の場として使われていたと、掃除というものは何をするにしても基本となる行いだ。このだだっ広い城内を雑巾を片手に駆け回る事で機士や見習いの訓練になるのだからな」

「だからって……本部より広い城を用意する必要はないのでは?」

 呆れた口調でメディエットが言った。ランディスはそんなメディエットの肩に手を乗せ、目を輝かせながら口を開いた。

「あぁ、そうだ、全盛期はよかったのだが。今は、どこも人手不足でね、城内の掃除だけで日が暮れてしまう。だから君みたいな新入りは助かるのだよ」

「えぇ! 私はあくまでも助っ人だ……。この城の……。掃除なんてっ……。」

「本当に助かるよ、メディエット君」

 そんな目的で来たわけではないのだが。メディエットはランディスの輝く目に押され、半ば諦め気味に肩を落とした。そして胸中に事件の早期解決を決意したのだった。



今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。


もし少しでも内容が面白かった、続きが気になると感じていただけましたら、ブックマークや、画面下部の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に変えていただければと思います。


それらの評価は、私の創作活動への大きな励みとなります。

どんな小さな支援も感謝します、頂いた分だけ作品で返せるように引き続き努力していきます。


これからもよろしくお願いします。


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