あかずきん
三題噺もどき―ごじゅうご。
お題:赤ずきん・学校・ひしひし
私は“赤ずきん”と呼ばれている。
学校の人にも。
家の人にも。
別に、かのおとぎ話のように赤い頭巾をかぶっているからとかではなく。
―髪の毛が赤いのだ。
安直すぎてどうかと思う。
これは、生まれつき。
反抗心からとか、グレて染めたから、とかではない。
そうだったらよかったかもしれない。
両親も、祖父母も、赤なんてものとは程遠いほど綺麗な黒い髪をしているのに。
私だけ赤。
そのせいで、誰からの愛情も受けることは無かった。
両親にも、祖父母にも。
虐待を受けていたとか、言葉で惨めに貶されたとか、そんなことは無い。
傍から見れば、仲のいい家族だと思う。
でも、それはただ、世間体を気にしているだけで、私を愛している訳では無い。
「愛している」なんて、生まれてこの方言われたことはない。
それは、幼い頃からひしひしと、感じて、分かっていたことである。
そして、つい最近、妹が生まれた。
髪はもちろん、綺麗な黒。
―彼女は、家族からの、愛情をたくさん受け取っていた。
私に注げなかった分、彼女にすべてをささげようというように。
(あたりまえか……)
それが普通なのだから―そんなふうに諦めたように、装っていた。
それでも、妹のことは憎かった。
私に注がれることの無かったたくさんの愛情を、妹が一心に受けるのだと思うと。
周りの人間に、愛されることもなく、赤ずきんと呼ばれ、自分の本当の名前さえ忘れてしまった。私の、代わり。
だから、いつからか、私のなかで、その憎しみは形をもって、心の中に巣食っていた。
そして、それは、ついに、私を突き動かした。
その憎しみを、晴らすべきと。
「……」
私の目の前には、お揃いの赤髪になった両親と妹。
真っ赤に染まったそれを見て、私は独り立ち尽くす。
「……これで、ホントの赤ずきん……」
髪も、服も手も足も、真っ赤に染まった赤ずきん。
赤い涙を流して、独り。