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ガブリエラの手紙

可愛いクラウディア



 何も告げずに、祖国から追い出してしまう事をお許し下さい。

 時間が無かったの。

 貴女も発現してしまったから。

 お父様には気付かれぬよう水面下では準備をしていたのだけれど、あまりにも急に送り出したものだから戸惑ったでしょうね。

 あのまま皇宮に居たら、私だけではなく貴女まで傷付く事になるのが分かっていたから。

 私とフェリクスで、フロレンツィア姉様の現状を探っていたのは話していたでしょう。

 貴女が今居る里の者達は、昔は皇家の影も担ってくれていた一族でもあるの。

 今ではロイヒテンブルク公爵家としか繋がりを持っていないのだけれど、彼らにフロレンツィア姉様のいらっしゃる大神殿への潜入調査をお願いしていました。

 姉様は……まだ、かろうじて生きていらっしゃる。

 けれど、心は壊されてしまっていたの。

 銀髪銀目で、女には特殊な能力が発現する我々皇家の血筋を使った悍ましい研究。

 ケダモノのように男達と交配させ、出産した子に銀髪銀目と特殊能力の発現を望んでの道具として、姉様は…。

 ディートとエミーリエ様も生きていらっしゃる。

 神殿の幹部達が言っていたそう。


 "代わりになる新しい種と器を手に入れた"と…。


 フロレンツィア姉様・ディートフリート・エミーリエ様の状況をお父様はご存知なのかと、アサギに頼んで調べて貰いました。

 知っておられるならば、調査結果を私から奏上するつもりで。

 数日間お父様の動向を探って貰っている内に、別の恐ろしい情報が入ってきました。

 私かクラウディア、二人のうちのどちらかに、お父様かクリスティアンの子を産ませると。

 その時はまだ私が発現しただけだった。

 候補としての最有力は私だったの。

 でも、貴女まで発現してしまった。

 お父様や、皇家と血縁のある公爵家の者達が話していたそう。

 "元々、近親相姦で血脈を繋いできた。仕方がない事だ。むしろ発現した女が出た今は、女神の祝福であり恩恵であろう"

 報告を受けてからは、あまりの気色悪さに吐き気が治らなかった。

 次第に衰弱していく私を見て、貴女とクリスティアンには心労をかけてしまいましたね。

 貴女と二人で逃げ出す事も何度も考えました。

 だけど、クリスティアンを一人置いていくのも、フェリクスと生涯離れ離れになるのも、両方とも私にとっては身を切られるように辛かった。

 皇家としての責任も負わずに、国民を見捨てる事も出来ない。

 だからこそ、私は帝国の行く末を見守っていこうと思うの。

 自分勝手な姉様を許して欲しい。

 クラウディア、貴女だけはこの悍ましい血脈から解放して自由に生きさせてあげたかった。

 いつか心の底から愛する人と出会って、暖かい家族と家庭を育んで、そんな普通のようで夢物語みたいな幸せを実現して欲しい。

 貴女は私の希望であり、愛そのものよ。



 最後に、何故貴女を名も無き里へ送ったのかについて書き記します。

 このトラキア大陸には、古代文明の名残りといった、自然崇拝の跡が残った清涼な地が様々な土地に点在しています。

 名も無き里もその一つです。

 少し山間に入った先に荘厳な滝があると思います。

 古代文明で言う、聖地と呼ばれるものです。

 その昔、私達の血脈は聖地で不思議な声と対話し、困っていれば力になってくれていたそうです。

 例え声が聞こえなくても、祈りを捧げてみなさい。

 貴女の言の葉が届けば、皇家の血である貴女の匂いを隠してくれる。

 皇家の女が初潮を迎え能力を発現すると、どこに身を隠そうが同じ血筋の男には分かるそうです。

 これは禁書に載っていた話なので、どこまで事実か分かりませんが、身を守って欲しい。

 貴女の初潮が始まった途端、お父様も貴女に執着し始めたでしょう?

 皇家の女の血は、血脈の男を惑わす媚薬のようなものだと思って下さい。

 今貴女に飲んで貰っている丸薬は、排卵を抑制し、月経を止めるもの。

 気休めにしかならないかもしれませんが、貴女が見つからないように渡しました。



 もっとたくさん貴女に愛を伝えてあげたかった。

 クリスティアンの事は私に任せて、貴女は貴女の幸せを見つけて下さい。

 いつまでも、愛しい妹クラウディアの幸福を祈っております。



 ガブリエラ


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