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クラウディアの過去④

 ある日、ここ最近はクリスティアンの体調が良いというので、三人で離れの宮から少し行った所にある湖まで避暑に行った。

 珍しく父である皇帝陛下の許可も下り、監視の目は多いが束の間の休息を楽しんでいた。

 三人共に、久しぶりに息が吐けたのはあの時だけだった。その油断が招いたのだろう。

 湖の岸ではしゃいでいるうちに、クラウディアの帽子が風で飛ばされてしまった。

 それを掴もうとしたクリスティアンが体勢を崩し、大きな水飛沫を上げて湖に落ちる。

 慌てて騎士達が水に飛び込むが、クリスティアンはだいぶ沈んでしまっていたのだろう。

 騎士達が懸命に潜るが、一向にクリスティアンは見当たらない。

 自分のせいで、愛しい弟が死んでしまう。

 ディート兄様もお母様も死んでしまった。

 病いに臥せっているというフロレンツィア姉様も、もしかしたらもう生きてはいないのかもしれない。

 絶対に死なせないと、強く願い、手を差し出して『クリスティアン!!』と叫んだ時だった。

 湖の水が大きく揺らいだ。

 かと思えば、湖面が生き物のように蠢き、ぐったりとしたクリスティアンを包み込むようにして、岸辺にいる私達の前へゆっくりと引き揚げたのだ。

 何が起こったのか分からなかった。

『……発現だ…』

 騎士のうちの誰かが呟く。

 その呟きに呼応するように『第三皇女殿下万歳!!』『発現なされた!』『帝国は安泰だ!!』というような声がうるさいくらいに耳をつん裂く。

 そんな騒ぎなど気にも止めず、クリスティアンの安否を確認すると、ゲホゲホと水を吐き出す彼の姿が目に映った。

 思っていたよりも沈んでいたのは短時間で、すぐに引っ張りあげられたようだった。

 ホッと一息ついてガブリエラと目を見合わせると、彼女は血の気を失った顔をして、悲しげな声音で

『……クラウディア…』

 と、一言呟いた。

 

 

 

 報告を受けた皇帝率いる貴族院の議場は歓喜に渦巻いた。

 相次ぐ皇族の訃報と皇太子の不在は帝国に大きく影を落としていたが、皇女二人の発現はこの数十年成し得なかった快挙であり朗報だった。


 第二皇女の"植物の促進"は、不毛で実りの少ない土地を肥沃な地へ、第三皇女の"水の操作"は、治水管理や異常気象においての土砂災害など、水害を軽減させるのも可能だ。


 兄と母の葬儀からまだ一年も経っていないのにも関わらず、騒がしく湧き立つ城内の雰囲気に逆行するかのように気持ちだけが暗く沈んでいく。

 発現した時、クラウディアへ向けたガブリエラの悲しげな表情が思い出されるからだ。

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