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馳せる

「…申し訳ございません。今だ、行方は掴めず」

宮殿の中の豪奢な一室。

金の装飾のなされた天蓋の下の寝台に男が一人、気怠げな様子で報告を受けていた。

その寝台の横で、騎士服をきっちりと着こなした男が跪き、顔を伏せ礼を尽くして話を続ける。

「サヴォイア国の主要都市で検閲を強化している様子ですが、一向にそれらしき少女の情報は…」

「あれから何年だ?」

跪いた男の肩がビクッと震える。

「…まあいい。誰にも渡すな。必ず生きたまま連れてこい。ハーデス」

「はい」

跪いた騎士服の男のすぐ背後に控えていた、銀髪の男へ声をかける。

「アドルフと共にサヴォイアへ向かえ」

「ですが、手掛かりが無いのでは…」

「お前なら分かる筈だ。行け」

話は終わりとばかりに手で追い払われる。

「…はい」

跪いていた男と共に一礼をし、退室する。

しばらく宮の廊下を歩いてから、銀髪の男が深いため息を吐いた。

「…本当に見つかるのだろうか。そもそも生きているのかどうかだが…」

「我々が不甲斐無いばかりに、殿下にまでご足労頂く事になってしまい…」

「いや、それは構わない。妹が実在するのならば会ってみたいしな」

歩みを止め、赤茶色の髪の騎士服の男に笑いかける。

「それよりも、第一騎士団に野盗紛いな事をさせた方が問題だ。すまなかったな」

「任務ですので。アレは一度きりでしたし」

騎士服の男は恐縮する。

「…私が行けば分かるのだろうか…父上は何故そこまでして探し出そうとするのだろう」

「私共も詳細は聞き及んでおりません。ですが、レイナードは何かしら事情を知っている様子でした」

「…レイナード・フォン・ロイヒテンブルクか…」

銀髪の男は苦々しげに顔を歪める。

「数日前から別働隊を率いて、サヴォイアに潜入しております」

「…分かった。業務をある程度納め次第、こちらも捜索に向かうとする。急がなくていい。数人、信用の置ける者達を選出しておいてくれ」

「はっ!」

騎士服の男は両足を揃え敬礼し、深々と一礼をして去っていく。

(妹か…)

その存在を初めて知ったのも三年程前だった。

母は自身が2歳の時に亡くなったと聞いていたが、サヴォイアの辺境の村で妹と共に暮らしていたという。

それ以上の事は何も知らされていない。

何故、亡くなっていた事になっていたのか。

何故、帝国から亡命したのか。

(…エヴァ)

まだ見ぬ妹に想いを馳せ、沸き立つ胸を抑えながら早足に自室へ向かった。

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