少年の誓い
ずっと見ていた。
夢の中で出会ったのだと思っていた女神が、次々と男達を倒していくのを。
地下牢で周りの子供達が眠ってからも、自分だけは目が覚めたままだった。
『必ず、助け出す』と言ったあの言葉を実行してくれている。
牢屋の目の前は血の海が広がり、匂いが籠り吐きそうになりながらも、瞬きもせず銀髪の美しい女性から目が離せなかった。
まるで舞っているかのように優雅で、それでいて容赦がない。
無表情に淡々とこなしていくのだが、自分の目には怒りの炎が纏わりついているように見えた。
周りの子供達が地下牢から抜け出す中、僕だけはこっそり銀髪の女性の後をついていった。
そしてあの時、自分を二度も売ろうとしたあの女が目から血を垂れ流し、這いつくばりながら女神に向かって杭を突き刺そうとしたんだ。
無我夢中で牢屋の中に飛び込んで、『守る!』と、心の中で強く願い、手を伸ばした瞬間、自分の身体から何かが出たように力が抜ける。
あの女を見ると、頭部が燃えていた。
何が起こっているのかは分からなかったけど、自分が放ったのだけは何となく理解した。
思わず呆然と燃え盛る女を眺める。
気付いたら銀髪の女性が側にいて『行こう』と言って、僕の手を取り優しく微笑んでいた。
地下牢から助け出されてから、僕は彼女から片時も離れなかった。
無表情に見える透き通るような銀の瞳の奥には、ドロドロとした怒りと悲しみが混在して見える。
彼女は僕が守るんだ。
そう決めたのに、彼女は僕を置いて夜の闇に消えてしまった。
手荷物は置いてあったので戻ってくるとは分かっていても、不安でしょうがない。
帰ってきた彼女は怪我もなく、穏やか目で僕を見つめてくれた。
そして名前を聞いてくれた。
元の名前は、時が経ち過ぎて違和感がある。
親に売られてからはずっと『6番』だった。
どう答えれば良いのか悩んでいると、
「…ユノ…」
と彼女が呟いた。
地獄から抜け出そうと、自らを犠牲にして僕を逃してくれた恩人の名前。
彼の名を、最後まで呼び掛ける事も叶わなかった。
激情が涙の粒となり、溢れて止まらない。
そんな僕を彼女は優しく抱きしめて、瞼にキスをくれた。
今日から僕は、あの心優しき勇敢なユノになるんだ。
そして、この汚れなき美しい人を誰にも傷付けさせない。
そう心に深く誓った。




