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見せしめの合図
「遅かったな」
ルカは素気なく言い捨て、物置小屋の方へ向かう。
「あの煙は何だ?」
コーエンが問いただす。
娼館の開いた窓からか細い煙が立ち上っていた。
「煙のよく出る香を大量に焚いている。館に侵入してあちこちに設置してきた。強力な睡眠効果のある野草を煎じてあるから、中にいる人間はしばらく目を覚さない」
「外で見回りをしていた警備の人間はどうしました?」
「火事が起こったと見せかけたからな。館に飛び込んで行ってから出て来ない。今頃熟睡してるだろう。門前の警備の人間だけは気絶させた」
事もな気に言い切る。
あまりにも段取りが良いので、やはり裏稼業の人間に見えてしまう。
「警備の人間も娼婦も、人身売買には直接の関係は無いんだろう?オーナーは捕らえてある」
「…ああ、オーナー以外は無関係だ。あいつはどこに?」
「眠らせて地下牢だ。子供達も眠っている」
「どうやって眠らせたんですか?香を投げ入れても、狭い地下牢では煙が充満する前に気付かれて消されますよね?」
カーティスの素朴な疑問だった。
「"命令"をしただけ」
ルカは物置小屋の扉の前で立ち止まり、二人に振り返った。
「さあ、見せしめの始まりだ」
扉を開けると真っ暗闇の中、光が漏れている床があった。




