害虫駆除
「お前ら、洞窟に爆薬設置してこい」
「えぇ〜!?オレらこのクソ重いもん持って帰ってきたばっかっすよ〜?」
「酷使しすぎー!」
山小屋から漏れる会話に耳を澄ます。
子供達を馬車へ送っていった男達が帰ってきたのを見計らって、ルカはすぐ側の茂みで山小屋の様子を窺っていた。
先程の二人がぶつくさ呟きながら、爆薬の入った木箱を洞窟へ運んでいく。
二人が洞窟へ入るのを確認してから、山小屋の扉付近と窓の下に大目に、壁沿いへ油を撒いていく。
そしてマッチを擦って放り投げた。
「さあ、害虫駆除の時間だ」
徐々に油へ引火し、勢いをつけて炎が山小屋の壁を包んでいく。
木造の家屋は火の回りが早い。
山小屋と洞窟のある周辺は開けている為、森に火が伸びて引火する事はないだろう。
中に居る連中はまだ気付かない。
背負っていた大剣を引き抜いて、山小屋が火の粉を上げる様を見つめ続けた。
こんな風に、パヴァリア村も燃やされてしまったのだろうか。
自分のしている事は、村を襲ったあいつらと同じだ。
腹の底が気持ち悪くなっているのは、自身に対する嫌悪感から来るものだろう。
突然、火の手の少ない壁が音を立てて内側から叩き壊される。
気付いた数人が斧で壁を破壊したらしい。
我先にと押し合いへし合いしながら脱出する煤まみれの男達。
全部で15人前後だろうか、思ったよりも動けそうな人数は多く、そして早かった。
ちょうど生き残り達が脱出した後に、小屋に設置した爆薬に引火したらしい。
爆風と炎を上げて激しく崩れていく。
「…危ねえ…」
「はぁっはぁっ…クソッ…何なんだ!」
「おい!今何人いる!?」
「火、付けやがった奴がいるはずだ!探せ!」
場は混乱しているが、意外にも統制は取れていた。
ルカは自身の指先が震えている事に気が付いた。
予想よりも多くの人間を目の前にして、恐怖に慄いているのか。
それとも、初めて人間を斬るという事に高揚しているのか。
どちらかは分からない。
「…何だ?お前」
連中のうちの一人がルカに目を留めた。
その声に反応して、男達は一斉にルカを囲む。
「おいおい、何だその剣はぁ?」
「テメェが山小屋に火付けしやがったのか!?」
「隠してねぇで顔見せやがれ!」
ルカは羽織っていた外套を脱ぎ捨てる。
この方が動きやすい。
外套を脱ぎ捨て、顔が露わになったルカを見て、男達は下卑た笑いを上げる。
「すげぇ別嬪じゃねえか!」
「嬢ちゃん、こんな所で迷子かぁ?」
「まわしちまおうぜ!」
「オレが先だ!お前ら抑えとけ!」
ルカを囲む男達が距離を縮めていく。
「へへっその澄ましたおキレイな顔もヒィヒィ言わせて…」
ザシュッ!
男が言い切る前に、上半身と下半身がバラバラに宙を舞う。
指先の震えは無くなっていた。
「感謝するよ。お前達が真正のゴミ屑なのが分かって。後悔どころか清々する」
あまりに一瞬で、男達には何が起こったのか理解していなかった。
だが、ルカの発した言葉を聞いて、仲間を斬ったのはこの女だと悟ったようだ。
「…テメェ!舐めやがって!」
斧を持った男が一人、斬りかかる。
それをかわし、背後に回って斜めに斬りつける。
ルカは斬りつけただけのつもりだったが、黒剣は男を二つに切り分けた。
分厚い刀身にも関わらず、斬り捨てた断面はとても繊細なものだった。
一瞬の後に血が噴き出す。
(…この黒剣があれば、怪物達相手でも骨を折らずに済むな)
そんな事を思いながら、側に立つ男を続け様に二人斬り捨てる。
数分もしないうちに4人も殺され、男達は呆気に取られていた。
「どうした?何もせずして死にゆくつもりか?」
そう言い捨て、更に一人の首を刎ねる。
「…くっクソッ!全員でかかれ!」
この拠点を仕切っているであろう男が反応する。
呆然としていた男達も正気を取り戻し、怒声と共にルカへ飛びかかっていった。




