必ず、助ける
「ここから10分程、森の中を歩いた所にあります」
馬車を業者の男に任せ、カーティスの案内で進んで行く。
「子供達の安全は任せる。誘導が終わり、牢番が森の中へ入ってしばらくしたら、ソワソンへ向かえ」
「しかし、貴女を置いていくことになってしまいますが」
「構わない。職業通行証も貰っている」
サヴォイア国民では無いルカは身分証を持っていない。
ましてや、母とジュードに連れられて逃げ込んできたタクシス帝国からの流れ者だ。
「後始末が終わり次第、次の拠点へ向かう。子供達は必ず、無事に送り届けろ」
商人の馬車が偶然、街道を行く満身創痍の子供達を発見し、ソワソンの警備隊へ通報を入れる。
という、手筈だ。
「…かしこまりました」
納得がいかないといった体だが、渋々了承した。
「私はここまでだ。誘導は頼んだ」
歩みを止め、ルカへ振り返り、
「御武運を」
酷く真面目な様子で見つめた。
何だかこの男は、かつて母の従者だったジュードを思い浮かべてしまう。
話し方も髪の色も違うのに、男の醸し出す生真面目な雰囲気と、主人に対する忠誠心が似ているのだろう。
無意識に表情が緩んだ。
「…ありがとう」
ルカの柔らかい表情に少し驚いたようだが、慌てて眼鏡の位置を直し、一人で小屋へ向かっていく。
森の奥を進んでいくカーティスの後ろ姿を確認した後、手頃の太く伸びた木を見つけて、てっぺんまで登る。
カーティスの歩いて行った方角に目を向ければ、森の中が少し開けた場所に岩壁が見える。
"ルカー!"
"苦しそうな声が聞こえるー!"
"子供達ー!"
"たくさんー!"
声達が騒ぎ立てる。
「…必ず、助ける」
地下牢での少年少女達にも誓った。
風を伝って人間の気配を辿ってみれば、事前にカーティスから聞いていた通りの人数が集まっているようだ。
例の"命令"で従わせれば簡単に解決出来るだろうが、アレを多用すると身体に負担が掛かる事が分かった。
コーエンから情報を引き出した際も、しばらくは貧血と息切れが治らなかったのだ。
把握の出来ていない不可思議な現象に頼るよりは、確実に行動する方が無難だろう。
「日が沈む前に片付ける」
ここは森の中だ。
時間をかけてしまえば、暗闇に紛れて怪物が襲いくるだろうから。




