待ち焦がれる
「必ず、助け出す」
耳に心地良く透き通った、けれども凛として力のある声が聞こえたような気がした。
声の主を見たくて、無理矢理目を開けたんだ。
目の前には見た事もない程キレイな人が居て、優しい顔をして僕たちを見つめていた。
女神様が僕らを迎えに来たのかな?
もしもそうなら、もうすぐ君に会えるかもしれない。
勇敢で、強くて、僕を救おうとしてくれた君に。
もう一度会いたいよ。
…ユノ。
少年は、久しぶりに穏やかな夢の中で微睡んでいた。
「ルカ、今からちょいとランチに付き合ってくれないかい?」
朝、宿の一室で身支度を整えながら、マリアがニコニコと昼食を誘ってくる。
「私で良ければ」
待っていた。
昨夜の話では、元締めらしき男とルカと引き合わせるよう話していた。
「あたし一人で行くには可愛らしいお店でねぇ。ウィルも行けなくなっちまったし」
「ウィルさん、お仕事ですか?」
「仕事だったらどんだけいいか。あの馬鹿、昨日酔っ払って賭場で暴れたみたいでね。店の前で素っ裸で寝こけてたらしいんだよ」
呆れ顔で話すマリアに対して、驚いた様子のルカ。
もちろん、ウィルは賭場で暴れたのではない。
人目のつかない場所まで運び、歩くのが辛い程度に痛めつけ、賭場の近くに放り投げたのはルカだ。
ついでに衣服を剥いて、酒を振りかけて放ってきた。
あんな外道、すぐにでも殺してやりたかった。
だが、今あの男が消えたら、不審に思った元締めに拠点を移されてしまう。
地下牢の牢番達も、今頃は見張りの交代がやってきて、酒盛りでもして泥酔していたとでも思われているだろう。
もしも何かを察していたなら、今日の引き合わせも無くなっていたはずだ。
どうやら、ルカの発した命令は効いたらしい。
あとは子供達の様子だけが気掛かりだった。
「さて、準備が出来たら出発するかね!」
マリアがとことん悩んで選び抜いた、例のご令嬢風の装いに、緩くハーフアップに纏めた癖の無い銀髪を靡かせ、連れ立って宿を出た。




