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報いの決意

「やめろ!!」

ルカの怒号が空気を震わせる。

とたん、身動きをする音も子供達のすすり泣き声さえも無くなった。

空気が静まり返る。

「…な、なんだ?動けねぇ」

「オレも…」

不思議な事に、ルカの発した静止の言葉に反応して、身じろぎ一つ出来なくなっているようだった。

何が起こっているのかルカにも分かっていない。

だが、今のうちに顔を見られぬよう行動を起こすしかない。

ウィルと男の背後から手刀を繰り出す。

グェッと呻いて石床へ崩れ落ちた。

「何だ?今声が聞こえたが」

奥から更に二人、牢番らしき者達の足音が近付いてくるのが分かった。

ルカは近くの松明を消し、その場を暗くして、

「動くな!」

近付いて来る男達はやはり、ピタリと動かなくなる。

何だ!?どうなってやがる!?

と、戸惑う男達。

(発した言葉の通りになる?…ならば)

「眠れ」

バタンと、二つ分の重たい物が倒れる音が聞こえた。

不可思議だが、思った通りに無力化出来た事に安堵する。

男達に顔を見られなかったのは良かったが、この後どうするか。

今ここで子供達を助け出しても、根本的な解決にはならない。

とりあえず、少女に覆い被さったまま昏倒しているウィルを蹴り上げる。

少女を抱き上げ、男達の倒れている側を抜けて奥へ進んでいった。

鉄格子の嵌まった、石壁に囲まれた部屋の不潔な石床に、子供達が寄り添うように倒れている。

急いで駆け寄り、鉄格子越しに注視すると、すやすや寝息を立てていた。

男達だけでなく、子供達もルカの発した言葉に反応したようだ。

ホッと安堵の息を吐く。

少女を優しく石床へ降ろし、外れた肩を痛みが走らぬように一瞬で戻す。

そして眠りこけている男たちの懐を漁り、鍵束を探し出した。

鉄格子の中に、子供達は5、6人居るだろうか。

この人数を今すぐ外の見張りにも見つからず、全員助け出すのは不可能に近い。

「もう少し待っていてくれ…。必ず、助け出す」

そう語り掛けて、少女を子供達の側に寄り添わせるように横たえる。

痩せこけて、薄汚れた姿の、年端もいかない少年少女達。

その中の一人の子供が、むくりと上半身を持ち上げた。

薄汚れてしまってはいるが、黄金色した長い髪と、琥珀色の微睡んだ瞳。

7、8歳くらいだろうか、大人になれば素晴らしく整った顔立ちの少女に成長するだろう。

その子はルカを見つめ、

「…女神…様?」

そう一言呟いて、また静かに眠りについたようだった。

女神。

夜毎に怪物達と殺し合いを繰り返す私は、バケモノに近い。

酷い目に遭っているこの子達を救う訳でもなく、ただ傍観しているだけの空虚な女神ハルペイア。

ただ信仰対象であるだけで、何もしない女神や神は傲慢に思える。

「…今は、優しい夢の中でお眠り」

石床へ伏すように眠る、その美しい少女の髪を撫で、これ以上起こしてしまわないよう素早く鉄格子を抜け出て鍵を掛ける。

倒れた男達の元へ向かい、鍵束を懐に戻すのも忘れない。

「今あった事は忘れろ。…子供達は丁重に扱え。絶対に暴力を振るうな」

眠り続ける男達へ向けて命令した。

とたん、目眩に襲われルカは一瞬フラつく。

ここ最近は十分に睡眠と食事を取っていたはずだが。

とにかく、眠っている連中にどれだけ効果があるか分からないが、効力があるならば少しでも時間を稼げるだろう。

机に乗っている酒瓶を床へ撒き、空き瓶を転がした。

目を覚ます前にこの場から離れるべく、石段に向けて駆けるが、思い至ってウィルの元へ戻る。

「今から受けるものはほんのちょっとだ。お前には必ず、激しい苦痛と報いを与えてやる」

毎夜襲い来る怪物達よりもよっぽど恐ろしい事が出来るこの男を、ルカは許すつもりはない。

大男であるウィルを軽々と担ぎ上げ、もう一つ酒瓶を手にし、石段を駆け上る。

こいつもマリアも、この人身売買組織自体壊滅させてやらなければ意味が無い。

地獄に突き落としてやる。

そう心に誓って石段を登っていくと、

"…ユノ"

心の底から求めているような、哀しげで切ない呼び掛けが頭に響いた。

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