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ソワソン

辺境の村育ちのルカは、街の外壁に立派に聳え立つ門から覗く見慣れない街並みと、聞こえてくる喧騒に、つい呻き声を漏らす。

「栄えてるだろ。この街はソワソン。あたしらは仕事でね、買い付けでしょっちゅう来てるんだ」

門前では衛兵達が身分証を検める作業を行なっていた。

「…やはり、ぼ…私はここまでで」

あの事件から三年近く経っているとはいえ、お尋ね者には違いない。

これほど栄えた、灯りの消える事の無い街中にまで怪物達が現れるとは思わないのが、人の目の多い場所は危険すぎる。

銀髪銀目の人間はほぼいない。

自分が目立ってしまうのは容易に想像できた。

ローブを目深に被り、おぶされた背中から降ろして貰った所で女性が止める。

「…身分証かい?大丈夫だよ。あたしらが職業通行証を持ってるからね」

そう言って、身元検めで長蛇になっている列とは別の、幌馬車が数台並んでいる方の最後尾に並ぶ。

「ここ数年は、こういったデカイ街は検閲が厳しくてねぇ」

危惧していたような事は起こらず、至ってスムーズに検問を通過出来た。

「あたしらは行商人でね。街から街へと転々と渡り歩くから、不便が無いように通行証を貰ってるんだよ」

にっこり笑ってルカの手を引いていく。

門を抜けてしばらくすると、噴水のある広場に人々がごった返していた。

露天が立ち並び、威勢のいい客引きの声。

買い物に興じるご婦人や、子供達の笑い声、昼間から酒を煽る人々、生き生きとした活発な街並みの様子に目を奪われる。

"人がいっぱいいるねー!"

"ちょっとうるさいねー"

"うるさいけど面白いよー!"

声達も沸き立っていた。

露天や飲食店で騒ついた表通りを進んで行くと、煉瓦造りの小洒落たお店が立ち並ぶ。

暫く歩いて小道に入り、細い路地裏に面した宿屋らしき店構えの一画に辿り着いた。

受け付けを終え、部屋へ上がる。

「ソワソンで仕事をする時はいつもこの宿に泊まってるんだ。さぁ!あんたのその泥だらけな格好じゃ飯も食いに行けやしない!この時間じゃまだ湯は張ってないだろうが、風呂場でさっさと洗い流してきとくれ!」

ニカっと笑顔を見せて、厚手の布と着替えを渡す。

「…すまない。行ってきます」

擽ったくなるような善意に違和感を抱きつつも、素直に礼を伝え風呂場へ向かう。

川で汚れを落とすか雨曝しで過ごしていた日々。

正直な話、有り難かった。

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