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不自然な生き物

(追ってきてる…急げ!)

背後に迫る怪物の跳躍の音を聞きながら、扉の壊れた鍛冶屋の出入り口へ飛び込む。

室内は狭い上に真っ暗で、足元も覚束ない。

ガァン!!

武器を探している最中、出入り口に巨体をめり込ませる怪物の姿が目に入った。

ルカは床に転がっていたクロスボウを手に取る。

だが、肝心の矢が見当たらない。

「クソッ!!」

「ギィヤァアアアア!!」

その時、出入り口を破壊しすぐそばに迫った怪物が雄叫びを上げ跳躍する。

狭い室内に咄嗟に動けず、怪物に押し倒されのし掛かられた。

ルカの左腕は怪物に押さえつけられ、動かせる右手で短剣を喉元に突き立てる。

切先は首には届かず、怪物の裂けた口に覗く刃に止められた。

ガジガジと、嘲笑うかのように短剣を啄み、ルカの手から取り上げ放り投げられた。

白髪を振り乱した老婆の、顔に空いた真っ暗な穴と歯茎を剥き出しにした不揃いの歯牙が眼前に迫る。

(食われる!)

死にものぐるいで床に手を這わせ、無機質な重量感のある何かに触れた。

右手でそれを掴み、力の限り振り回す。

「ギィヤァア!!」

怪物の顔面から生温かい液体が迸る。

握っていたそれは、一振りの長剣だった。

覆い被さったままの怪物が呻き声を上げ続ける中、渾身を込めて胴体を蹴り上げる。

すかさず長剣を構え直し、首元へ切先を叩き付けた。

ザシュッ!

呆気なく切り離された怪物の頭と胴体。

激しい血飛沫と、首だけになった怪物の口からは断末魔が上がった。

「ギィッ…ギッ…」

はぁっはぁっはぁっ…。

静寂が訪れる。

あとにはルカの息切れだけが響いていた。




致命傷を負うような大怪我は避けられたものの、ルカは初めて相対する怪物の出現に満身創痍だった。

今更、恐怖が勝ってきて足元が竦む。

窓から差し込む月の光を頼りに、怪物の様子を窺い見た。

何が起こっているのか、この怪物は何だったのか、いくら考えても皆目検討もつかない。

"ルカー!"

"良かったー!無事ー!"

「これは何なんだ?お前達は知ってるか?」

幾分落ち着いてきたルカは声達に問い掛ける。

"知らないー!"

"自然のものじゃ無いー!"

"作られたやつー?"

作られた?

こんな怪物を?

そんな技術や存在、現実的にあり得ない状況に、それでもこの怪物が実在している事に呻く事しか出来なかった。

血の匂いの充満する室内に長居するのも気が滅入るので、クロスボウと矢を探し、長剣を携え店から出る。

「…ミア…ケイト…」

村の惨状や非現実的な怪物との遭遇。

思考を巡らせるにも、状況も分からない上に情報すらない。

『愛し子よ。お前はこれから沢山の屍を築きあげなきゃいけないよ。生きていくつもりならね』

いつもの子供達じゃない、男とも女ともつかない声が嘲笑混じりに囁いた。

雲一つない夜空には、燦々と月の光が満ちていた。

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