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第十一幕より、冬至祭の始まり

 ジョー・モリソンは馬車から降りると大きく息を吸い込んだ。いつもなら金と欲の匂いがする王都も、今日ばかりは健全な空気で満ちている。だからモリソンは冬至祭が嫌いだ。



 ― お探しのレディ・コニーに(たくらみ)の噂あり、冬至祭にご注意なされませ ―



 古い情婦(コレット)から早馬で届いた手紙をくしゃりと握り潰す。何人もの息子を誑かした悪女が冬至祭に姿を現すと知った翌日には王都にいる()()()の手配は済んでいた。



 ― 当日は広場でお菓子を焼くのだそうです。きっと人で混み合いますから、レディ・コニーの姿を遠目に確認なさるにはもってこいかと ―



 コレットは機転も利いて頭も良い。年頃を過ぎても手放さなかったのは、こういった事態を想定してのことだ。




 広場には人々を誘う甘い香りが漂っている。人集りに隠れて辺りを見渡せば、数人のゴロツキがこちらの様子を窺っているのが確認できた。モリソンはレディ・コニーの顔を知らない。だから下請けの連中はモリソンの指令でもって動く手筈となっている。


「わぁっ!甘くっていい香りね、おいしそう!」


「殿下がご発案されたそうだよ。貧しい平民がたとえ銅貨1枚でも気兼ねなく献金ができるようにとのお考えだそうだ」


 人混みでも目立つひときわ大きな声に視線を向ければ、焦げ茶色の髪の女を連れた息子がいた。モリソンはゴロツキに目配せしようと顔を上げた。


 が。


「何でも買ってあげるよ、好きなものを言ってご覧?」


 別の息子は栗色の髪の女を連れている。


「ねーぇ?さっきから他の女の子ばっかり見てるんじゃない?」


 頬を膨らませた女を宥め賺しているのは、さらに別の息子だった。


「どれが……レディ・コニーだ…?」


 混乱するモリソンの視界の端に、赤い色が走った。

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