幕間 成長の痛みを貴方に
冬至祭は日照が少なく精神的にも塞ぎがちな冬が終わることを祝う古い祝祭で、新たな年の始まりを告げる祭りでもある。
太陽神を祖と掲げるヴァレンティーノ王家では太陽が再び力を漲らせることを祝い、その祝福を民に分け与えるため、成年王族が主導して広場などでの食事の振る舞い、神殿への訪問、孤児院や貧窮院の慰問といった福祉関連の公務を行うのが通例となっている。
「王子が成年になって初めての冬至祭だもの、いっとう楽しみで仕方ないわ」
執務室で。
銀髪の美しい王妃はふふふ、と優しく微笑んだ。現王妃は前王妃の死去により他国から嫁いだ後妻で、王子にとって継母にあたる。しかし実の母以上に愛を注いでいることは王宮勤めの者なら誰でも知っている。
「その愛継息子は随分と思い悩まれているようですが?」
王妃が故国から連れてきた王妃付きの侍女頭は呆れた眼差しを向けて言う。
「思春期だもの、悩み多き年頃でしょう?」
悪びれもせず王妃は応える。
「……後できっちりとお叱りを受けて差し上げなさいまし」
「まぁ!初めての親子喧嘩ね!」
それすらも嬉しい、と喜色満面の笑み。僅か6歳年下なばかりで体つきもがっしり逞しく育った継息子だが、王妃には幼子のように愛らしく見えるらしい。
「あの子は優秀だけれど、国を運営するなら、もっと周りを頼ることも学ばせてあげないと」