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序幕
徒然なるままに2作目の連載を始めました。どうぞよしなに。
毎日20時に更新です。
将来を約束された若者が王国全土から集まり、寮生活を送る王立学院の男子部では、近頃とある女性の名前が密やかに、しかし闇に隠れて活発に飛び交っている。
レディ・コニー
学院生の多くが婚約者持ちのため公の場ではその名が出ることはないが、カフェテリアで。寮の談話室で。或いは学び舎の片隅で。大勢の男子学生が彼女の身の哀れに涙し、彼女に好意を抱き、耽溺し。熱病の如く浮かれていた。
「知っているか、レディ・コニーは……」
「森での逢い引き……」
「淫靡な夜を……」
ここに集うは皆、15歳から17歳。社交界にデビューしたばかりの青少年たちが年上女性の色香と情事にのめり込むのは早かった。
禁断の愛。
秘密の逢瀬。
熱く甘く濃密な時間。
そうしたことを毎日、毎夜、たくさんの男子学生が隠れて囁き合う。その声は決して影の中からは漏れない、筈であった。