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第5話 僕にスカウトが殺到です

 

「うおぉぉ……凄い」


 両手に一杯の紙束を持って、僕は家路を急いでいた。


 先ほどまで訪れていたのは王都の職業安定所(トライアウトセンター)

 様々な理由でギルドやパーティを”追放”された人間に対して新たな就職先をあっせんしてくれる公共施設である。


「”優秀な”女神付き」、「”なんでも進化させる”ユニークスキル」


 ユーノについてはいささか誇張だけど、”進化”スキルをプロフィールに書いたところ、世界中からとんでもない数のスカウトを貰った。


 なにしろ、僕は試用期間中にギルドをクビになったので移籍金が掛からない……いわゆるフリーエージェント状態であることも幸いしたようだ。


「ふ、ふふふ……どこに就職しようかなぁ……むしろ外国でもいいかも」


 夢見心地の僕は、通りに連なる屋台でごちそうを買いまくる。

 今夜は祝杯だ!


 ……そうだ、(一応の)功労者である、ユーノも呼んでやろうかな。

 あの子、女神ちゃんのくせに大食いかつ肉大好き (特に脂身)だからな……。


 僕は、ユーノと連絡を取ろうと天界通信魔法を発動させる。

 ”女神付き”が必須で使えるスキルである。


「……ん? アレ? 出ないな?」


 普段なら、2コール以内に応答があるのだけど……。

 なにか取り込み中なのかもしれない。


 食事の準備をしてからまたコールしてみるか。

 僕は気を取り直すと、二人分の豪華料理を買いつつ下宿へと戻るのだった。



 ***  ***


「本当に出ないな……どうしたんだろう?」


 下宿に帰って30分後、すでにテーブルには料理が並び……あとはユーノが来るのを待つだけなのだが。

 先ほどから何度もコールをしてるけど、一向に応答がない。


「……まさか、”契約満了”?」


 噂で聞いたことがある……あまりにぶっ飛んだスキルをゲットした”女神付き”は、これ以上加護を与える必要なしと判断され、担当の女神ちゃんが引き上げてしまうことがあるらしい。


 もしくは、ポカをし過ぎてクビになったとか……ありうるなぁ。

 ……冗談めかして言った僕は、そこで初めて自分の心にぽっかりと穴が開いていることに気づく。


 いくらおっちょこちょいでも、僕がモンスターに襲われてピンチの時下痢で来てくれなくても。

 無駄に巨乳でもユニークスキルを誤字られても。


 この3年間、彼女の騒がしさにずいぶんと救われていたことに、今さらながらに……今さらながらに……気づいた、のか?


 よく考えるとずいぶん大概な女神ちゃんだったな……でも、心に生まれた寂しさは本当だ。


 仕方ない、これからはユニークスキルを武器に一人で戦っていかないと……。

 ため息一つ、せっかくの料理がもったいないので、上の階に住む知り合いでも呼ぼうと玄関のドアを開ける。



 がちゃ……



「うああああああっ……神様女神様ノイン様……どうか家に入れてくだせええええっ!」


「……………………」


 いつも華やかな女神の衣装は薄汚れ……涙と鼻水をダバダバと流しながら土下座していたのは、僕付きの女神ちゃん、ユーノその人だった。


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