第17話 温泉郷を救え!(前編)
「あちちっ……ユーノ、そろそろ防御魔法を」
「おっけ~、マジックシールド!」
シュンッ!
僕たちの目の前に、光の壁が現れる。
すかさず僕は”進化”を使い、防御魔法を強化する。
ブイイイイインッ!
鈍い音と共に、光の壁の厚さが10倍くらいになる。
これでまず大丈夫だろう。
突然噴火した火山……僕たちは調査のため、火口近くまでやってきていた。
「うわ、マグマの熱さを感じない……ホントチートだよねそのスキル」
自分で授与したスキルなのに、感心しきりのユーノ。
「よし、それじゃ火口の様子を覗いてみよう」
山頂部分が大きく陥没し、その穴から真っ赤に赤熱した岩石が絶えず吹き出してくる。
防御魔法のシールドが跳ね返してくれるが、正直コイツなしでは一瞬で消し炭だ。
僕は穴のふちに手を掛け、そっと顔を出す。
ゴボ……ゴボ……ドブッ!
遥か下方では、真っ赤なマグマが大蛇のようにとぐろを巻き、ときおり爆発が起きる。
温泉宿のおかみさんの話では、この山は数百年噴火の記録がない休眠火山で、温泉郷の人たちは神の住まう霊峰として崇めてきたらしい。
急に噴火するなんて、何か人ならざる力が働いているのかもしれない。
「ねえユーノ、なにか……」
感じない?
こちらには人ならざる者の代表格である女神ちゃんがいるのだ。
噴火の原因が分かるかもしれない……期待を込めて話しかけたのだけれど。
「”エリクシルヘア”! おおっ、二股に分かれたマグマが1本になったぞ……へへ、どんな枝毛も一本に! コレってヤバくね?」
「…………(ピキッ)」
げしっ!
本格的な噴火になれば温泉郷の危機だというのに、しょうもない遊びに興じる彼女に思わずイラっとした僕は、雑にユーノを火口に蹴り入れる。
「ぬぼあっ!?」
爆炎魔法で干からびたスライムのような効果音を上げて落下するユーノの身体は、惜しいところで防御魔法の壁に跳ね返され、こちらに舞い戻ってくる。
「ちょ、ちょちょちょちょノイン!?
いやいや! ユーノちゃん融けちゃうから! 液状化するから!」
「女神ちゃんなんだから融けても再生するでしょ?
あっそうだ! ミスリル銀でちょうどいい美乳な型を作ってパーフェクトユーノに生まれ変わらせてあげるよ! ナイスアイディア!」
「ナイスじゃな~いっ! 過程が熱いから! お子様に見せられないグ○映像になるからっ!」
実はユーノにプレゼントした首輪には魔法的なリードが付いているから、実際に落ちることはないんだけどね。
「ま、それはともかく……”進化”で氷雪魔法を極大化すれば、火口ごと凍らせる事が出来るんじゃない?」
物は試しだ……僕は立ち上がると”進化”のスキルを発動し、ユーノに目配せする。
「そだね……おっけ~! フロスト・ストーム!
わたし”くーるな女”だから、氷雪魔法は得意なんだよ!」
”クール”の意味が違う気がするが、懐も知能も寒い女という意味では合ってるかもしれない。
ユーノの両手から生まれた上級氷雪魔法は、僕の”進化”と反応し、巨大な渦を巻く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「うわ……ヤバイこれ」
瞬く間に直径数百メートルのブリザードに成長したユーノの氷雪魔法は、周囲を真っ白に凍らせていく。
防御魔法を展開しているとはいえ、早くしないと僕たちまで凍り付きそうだ。
「マグマよ……凍れっ!」
ビュオオオオオオオッ!
赤熱する火口のマグマに向けて右腕を振り下ろす。
荒れ狂うブリザードはすべてを凍り付かせ……。
しんっ……
嵐が収まった後に拡がるのは真っ白に凍り付いた火口。
噴き出していたマグマも急速に冷やされ、真っ黒な玄武岩に変化している。
「やったか!?」
「ふふんっ! ユーノちゃんとノインのコンビネーションは最強なんだから! 悔しかったら出直してくる事ねっ!」
「やーい、ばーか♪」
慎重に火口の様子をうかがう僕の隣で、小物悪役っぽいセリフを吐くユーノ。
あれだけの氷雪魔法、大丈夫と思うけどそんなにフラグを立てちゃいけない……そうユーノをいさめる暇もなく。
バキバキバキッ!
グオオオオオオオオンンッ!
「へっ?」
分厚い氷をぶち割り、巨大な何かが火口から飛び出してきた!




