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第1話 僕のスキルは”シンカー”です! え、クビ?

 

「はいっ! おめでとうノイン!!」

「あなたに特別な”ユニークスキル”が授与されることになりましたっ!」


 ふわふわと目の前に浮かぶ女神ちゃんのしなやかな右手が翻り、僕の身体を暖かな光が包む。


 やった!

 女神からの特別なスキルだ!!

 ()()()()()()()()()を射止めた僕は、ようやく順風満帆な人生を送れることを疑ってなかったのだけれど。


 ***  ***


 ひゅっ……がつんっ!


 思いっきり投げた石は、外側に曲がって落ち……複雑な軌道を描いて床で弾んだ。


「ふぅ……よしっ!」


 ユニークスキルの発動は完璧だ。

 緊張からか、いまだに胸がドキドキしている。


「……んでぇ? ソイツが何の役に立つんだよぉ、ノインんんんっ!?」


 隣で僕のスキルをチェックしていたギルドマスターのポンコさんから、ねちっこい声が掛けられた。


 3年間の下積み時代を経て、ようやくつかんだ冒険者ギルドの正式採用。

 先日手に入れた”特別なユニークスキル”をたった今披露したところだ。


「ポンコさん、コイツの”シンカー”、球しか投げられないそうですぜ!」

「ギャハハハハ! ”ユニークスキル”がコレとかマジかよ! おいノイン、キン○マでも投げてろ!」


 背後から取り巻き冒険者たちの爆笑が聞こえる。


「い、いやっ……鉄球を投げてモンスターへの不意打ち、とか……」


 必死に”スキル”の利点を説明しようとするけど、次第に声が小さくなってしまう。


 ああそうだ! 僕だってわかっているよ!

 このユニークスキルが()()()()()()()()()ことくらい!


「くくくくくっっ……なぁあノイン?

 お前が希少な”女神付き”だったからぁ、”ユニークスキル”の発現まで待ってやったがあぁぁあ」


「ギルドの”枠”もあるしぃぃい……俺らは生ゴミを雇う慈善団体じゃねえええんだよぉ」


 ポンコさんのネトネトした喋りが加速する。


「つまりぃ……てめぇはクビだぁ! 出て行きなぁ!!」


 がちゃん!


「「「ギャハハハハ!!」」」


 馬鹿笑いと共にギルドのドアが閉まり、僕は通りに放り出された。



 ***  ***


「くっそぉ……”女神付き”になってから3年、せっかく勝ち組の”冒険者”になれたと思ったのに」

「これじゃまた貧乏生活に逆戻りだ~っ!」


 短く切りそろえた赤毛をかきむしりながら叫ぶ。


 残念ながら、僕はまだ”試用期間中”の冒険者。

 ギルドマスターの権限で契約を解除できるのだ。


「やべぇ、とりあえず今月の家賃どうしよ……もう今週の国王杯に全財産を賭けるしか」

「いやっ、それならF○の方が……」


 王立競馬場で今週行われる競馬、果てはヤバイと噂の先物取引まで……どう見ても分の悪い金策しか思い浮かばない。

 冒険者になったという事でつい買ってしまった聖剣エクスカリバー (36回ローン)の支払いもあるのだ。


「おおおおぉぉぉお……」


 下宿に戻り、ヤ○中の浮浪者のようにプルプル震えている僕の脳裏に、能天気かつ爽やかな声が聞こえる。



『やっほ~! 元気してる?』



 ぱぽん!


 安物のポップコーンが弾けるような、気の抜けた音と共に一人の少女が()()()()()()()


「ユーノちゃんさんじょ……ぶべらっ!?」


 ……現れるなり躓いて床とキスをした。


 ばさっ。


 ボリュームの多い緑髪とひらひらとした衣装が床にべちょりと伸びる。


「…………」


 無様な様子にため息すら出ない。


「ぶっへえええぇ! びっくりしたぁ!!」


 床に伸びていた少女……ユーノが陸に打ち上げられたマーマンのような動きで飛び起きる。


「何もしなくていいから帰れ」


「カミソリのような拒絶!?」


「いやいや、わたし女神ちゃんとして、ノインに授けたユニークスキルのアフターサポートに来たんですっ!」

「邪険にしないで~~わたし、後が無いのっ」


 よよよ……しがみついてくるユーノ。


 ふわふわと広がるたっぷりの緑髪。

 おっとりとした大きな瞳は若草色。


 すらりとした体躯を赤青白の華やかなジャケットとスカートが包む。

 ひらひらと羽のように拡がる衣装は、確かに”女神”という言葉にふさわしい美少女なのだけれど。


「……はぁ、これで胸が小さければなぁ」


 清楚な雰囲気に似合わない巨大なふくらみを一瞥し、ため息を漏らす。


「わたしの武器を一刀両断!?」


 ズガーン、とショックを受けているこの子はユーノ。

 3年前に降臨した僕付きの女神である。


「アフターサポートに来てくれたのはいいけど、”シンカー”ってなに……球を自在なコースで投げられる、って冒険者として何の役に立つんだよ?」


「マジで勘弁してくれよ、ユーノぉ……」


 仕事熱心なのはいい事だけど、冒険者を目指していることは何度も伝えたはず。

 ”1つしかもらえない”ユニークスキルにこんな謎スキルを授けてくれるなんて……文句を言っても許されると思う。


「……へっ?」


 僕の言葉に、なぜかポカンとした表情を浮かべるユーノ。


「えっ……はっ? そ、そんなはずは……女神人生のすべてを掛けた、天界に並ぶもの無しなスーパースキルですよですよ?」


「ちょ、ちょっとステータス見せてっ!」


 シュンッ!


 慌てた様子で僕の”ステータス”を表示するユーノ。


「……あっ」


「”あっ”……?」


 僕のステータスを見るなり、絶句するユーノ。

 脂汗をダラダラ流している。


「しぃまったあああああっ! SSランク超スキル”進化”を授けるはずが、誤字って”シンカー”付けちゃったぁぁぁあああ!?」


「おいいいいいいっ!」


 ぺこん!


「へうっ!?」


 あんまりな事を絶叫するユーノに、思わず僕の全力ツッコミが炸裂したのだった。


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