作品タイトルの重要性
「え? もう貼り替えてしまうんですか!? まだ見終わってないのに……」
焦る酢ライムさまなどお構いなしに、運営ゴーレムが次々と新しい羊皮紙に貼り替えてゆく。
『ふふっ、酢ライムさま、ちなみに印象に残ったお店(作品)はありましたか?』
「そうですね……お店紹介もろくに見れなかったですけど、『ふんどし王子にこんにゃく破棄された』と『色々ぎりぎり聖女』が気になりましたね」
『さすがエロ……酢ライムさま。中々良い作品に目を付けましたね』
「ね、ねこ先輩っ!? 今、エロイムって言いかけませんでしたかっ!?」
ぷるぷる震えながらにじりよる酢ライムさま。チッ、最近読者に人気があるから調子に乗ってやがりますね!!
「――――ねこ先輩!? 聞いてますか?」
……細かい男は嫌われますよ、酢ライムさま。
私は酢ライムさまのぷにぷにほっぺを思い切り押し返します。
――――ぎゅむ~っ!――――
ふむ……見た目ほどプニプニではないですね。しかも、ライムの汁が足に付いてしまったではないですか!?
「ち、ちょっと、先輩何するんですか〜!」
『こっちの方がプニプニにゃ! 私が上にゃ!』
「え? いきなり何の話ですか!?」
肉球の話ですよ。私のピンク色のぷにぷに肉球のね。ふふふ。
肉球を舐めると、程よい甘さと、ライムの酸味が極上のハーモニーを奏でます。やはり後で少しだけ食べましょうね。にゃふふ。
Illustrated by 空野奏多さま
『ところで、それ以外のお店(作品)はどうでしたか?』
「すいません、ぎりぎりふんどし聖女に全部持っていかれて、覚えてないです……」
『……勝手に混ぜないでくださいエロイムさま』
「ああ〜っ!? やっぱりエロイムって言いましたね」
そんな見た目でぷんスカ怒っても怖くないですよ?
『酢ライムさま、これが、投稿するということなんですよ。運良く掲示板に貼り出されたとしても、わずかな時間の中で、他のお店との戦いが待っているのです。ここで興味を持たれて初めてお客さまに来てもらえる可能性が生まれるのです』
「ゴクリ……まさに弱肉強食!? ということは、目立つように奇抜なタイトルじゃないと駄目なんですか?」
ゴクリとか口に出して言う人、初めて会いました。
『そうとも言えますし、そうでないとも言えます。酢ライムさま、掲示板を眺めている人々を見て何か気付きませんか?』
「え? ああ! そう言われてみれば、身なりが良い人が比較的多いような……」
『彼らは貴族です。時間に余裕があり、刺激に飢えていますから、すでにランキングを飽きるまで味わい尽くしたのでしょう』
「なるほど、ランキングには出てこない宝探しのような感覚で掲示板を眺めているのですね!」
『他にも、意識高い系豪商や流行りには見向きもしない教会関係者、へんてこを求める錬金術師など、さまざまな人々が、各々の目的を持ってここに集まっているのです。需要の多い少ないはありますが、お客さまは確実に見ています』
「つまり、どういうことですか?」
『酢ライムさまに覚えておいて欲しいのは、投稿する際、掲示板において選ばれる基準は店名が全てということ』
「たしかに! となると、やっぱり噂の長い店名が良いんですかね?」
『長さではなく、どんなお店なのかひと目でわかること、なおかつ印象に残る店名が理想的ですね! そして何より大事なことは、酢ライムさまが、どんなお店にしたいのか、どんなお客さまに顧客(読者)になってもらいたいのか、ですよ』
「なるほど、カレーを食べたいと思っている人に、カレー屋さんだとわかるようにすれば良いんですね!」
『はい、更に言えば、どんなカレーなのか、特徴がわかればなお良しです』
「そうか……だから店名が長くなりがちなのか……」
『そういうことです。ちなみに、ランキングと違って更新掲示板では、PC版で17文字、スマホ版で22文字までしか表示されないので、注意が必要です』
「店名もツカミが大事ということなんですね!」
※作中に登場するタイトルは、架空の物です。
こんにゃく破棄は、 ◇ゆん◇さまのアイデアをお借りしました~にゃは。