お気に入り登録を活用しよう
Illustrated by 空野奏多さま
『さて、とりあえず王都はこんなところにして、そろそろ行きましょうか、魔王を倒しに』
「えええええっ!? いきなり魔王ですか? っていうか、いるんですか魔王?」
『居る訳ないじゃないですか? 冗談ですよ、にゃふふ。それくらいの気持ちで行きましょうということです』
「驚かさないでくださいよ……」
ふむ、驚いている酢ライムさまを味見したいところですね……。
『ところで酢ライムさま、魔王を倒すために必要なものはなんだと思いますか?』
「えっと……聖剣とかチートスキルですかね?」
――――バチコーン!! 猫パンチ!!
「い、痛くない!? でもいきなり何するんですか!!」
『脳みそにゼリーでも詰まっているんですか? そんなの……ちゅぱちゅぱ……仲間に決まっている……ちゅぱちゅぱ……でしょうがっ!!』
おおっ!? 炭酸コーラ味!? 素晴らしい、素晴らしいですよ酢ライムさま。私は夢中で前足を舐めます。
「な、仲間!? た、たしかに!!」
『さまざまな困難をともに乗り越えて大きな目的を成し遂げる! これぞ王道!!』
「で、でも、俺は自分の力を試したくてこの世界に来たんです!! だから――――」
――――バチコーン!! 猫パンチ!!(2回目)
「い、痛くない!? ね、ねこ先輩!?」
『思い上がるな……ちゅぱちゅぱ……自分ひとりで出来ることなど……ちゅぱちゅぱ……たかが知れている!!』
「あの……さっきから、何を舐めているんですか?」
チッ、見ていないようで意外と細かい。
『酢ライムさまに問う、貴方は全知全能ですか? この世の全て本を読みましたか? 誰にも負けない得意分野はありますか? 人は生物としては脆弱です。しかし、コミニティを作り、社会を形成し、記憶と記録を共有することでカバーしてきたのです。力を試す? 笑わせないでください。貴方はこの世界では最弱、最強の後輩の中の後輩なのです』
「くっ、そこまではっきり言わなくても……」
ふふふ、どうやら誤魔化せたようですね。
『酢ライムさま……アレを見てご覧なさい』
私は目の前に広がる広大な砂漠を見つめます。
「い、いつの間にっ!? えっ……こ、これはもしかして……?」
砂漠には人とも動物とも判別できない白い白骨がところどころに顔を出しています。
『はい、単独でこの砂漠を横断しようとした転生者のなれの果てです……』
違うかもしれませんが、ここは雰囲気重視で押し切ります。
「そ、そんな……ガクブル……」
……口に出してガクブル言う人に初めて会いましたよ。
『ひとりでは持てる水や装備も限られますし、ひとりでは見張りを立てることが出来ませんから、満足に休むことすらできません。登山だって、基本はパーティアタックなのですよ?』
「でも、俺はきっと仲間に頼って甘えてしまうから……」
『もちろん、仲間がいても貴方が孤独なのは変わりません。結局は酢ライムさま自身がやらねばならないのですから。開店するか閉店するか、どんな料理を出すか、決めるのは他でもない貴方です。誰も代わってはくれません。好きなことをやるとは、言い換えれば、全て自己責任。結果も含めて受け止めるのもやはり自分自身です。そこには仲間の入る余地はありませんよ。だから……それ以外の部分では頼っても、甘えたっていいのです』
「……先輩、でも、俺って、意外と人見知りでコミュ障なんですよ……」
『大丈夫ですよ。この世界には色んな人が住んでいます。きっと貴方の仲間を見つけられると思いますよ。前回説明した割烹(活動報告)やエッセイジャンルで趣味や感性の近い人を探すのもおすすめです』
「いやいや、見ず知らずの他人に話しかけるとか難易度高すぎ高杉くん」
『…………そんな酢ライムさまにおススメなのが、お気入り登録~!!』
「お気に入り登録?」
『はい~、この世界では、転生者を200人まで登録して、その人の活動を見守ることが出来るのです。具体的には、その方が新規出店やメニュー追加(作品投稿、更新)をしたり割烹(活動報告)で手料理を作ったり(更新)すると教えてくれるんです。気になる方がいたら、登録して、活動の参考にすれば良いのですよ~』
「そうか、見ているだけでも良いんだ。それなら俺にも出来そうですね!!」
『相手の活動スタイルをみて、話しかけられそうだったら、交流するのも楽しいですよ。あと、お気入り登録すると、相手にはわかりますから、もし知られるのが嫌だったら、非公開設定にすることもできます。仲間を作るつもりだったらおすすめはしませんが。そう言えば、酢ライムさまは、この世界のこと周りには秘密なんでしたよね?』
「は、はい……」
『それなら尚更です。ここにいる転生者たちは、動画やアニメ、マンガが全盛のこの時代に、文字を読ませるなんていう難易度鬼レベルのミッションに挑んでいる凄い方々。リアルでは出逢うことすら奇跡に近い偉人や英雄たちと対等に語り合える場所が、ここ小説家になろうなのですよ。仲間がいれば、情報交換やアドバイスももらえますしね』
「なんだか無性に仲間が欲しくなってきました。さっそく、ねこ先輩を登録しましたよ」
『その意気です!! 美味しい料理の店を見つけたら、誰かと共有したくなるじゃないですか? そんなときに仲間がいると何倍も楽しめるはずですからね。あ、ちなみにこの状態で、私からも酢ライムさまをお気に入り登録すると、相互お気に入りユーザとなりハートの矢が刺さります。しませんけど』
「ええええっ!? 酷いじゃないですか!! 相互してくださいよ~」
『私は上限200人登録済みなので出来ないのですよ。諦めてください。にゃふふ』
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Illustrated by みこと。さま
Illustrated by 糸さま