小説家になろうでは、読まれないのが当たり前
ユーザー登録したのは良いけれど、どうやったら読まれるのかわからない。色んな機能があるらしいけれど、使い方がわからない。そんな右も左もわからない超初心者ユーザーさま向けの異世界風ゆるい案内エッセイ。役に立つか立たないかは、あなた次第です~。
こんにちは〜! 聖属性エッセイスト、ひだまりのねこですにゃあ。
さて、私もあと2カ月弱、10月末にここなろうでの一周年を迎えます。
それなりに後輩ユーザーさまも増えたはずと仮定して、私の経験が何かお役に立てないかな~と考えたのです。先輩風を吹かせようとも言い換え可能。ふふふ。
たかが10カ月、されど10カ月、創作論に関しては、お役に立てそうもないので、私なりに気付いたことや、失敗したことをお伝えできればと。
早速ですが、第一回目は、
『小説家になろうでは、読まれないのが当たり前』です。
え? そんなことは言われなくてもわかっている?
まあそうなんですけど、私自身何もわからない状態で投稿を始めたので、新人ユーザーさまもその前提でお話をしようかなと思っています。
このエッセイジャンルでは、過去何度となく取り上げられている話題ではありますけれど、何度でも繰り返しお伝えするべき。悩んだり行き詰まった新人さまがエッセイジャンルにやってくるのはあるあるなのですから。
読まれないというのは、どんな屈強な書き手さまでも、メンタルを削られます。そのせいでやる気を失ったり、悩んだりしますから、なろうでの活動を始めたばかりのユーザーさまであれば尚更不安なことでしょう。
読まれないという状況をある程度客観的に把握することによって、必要以上に悩んだり、自己嫌悪に陥らないで済むかもしれないと考えたのが、このエッセイを書こうと思ったきっかけです。
当たり前のことばかり書くとは思いますが、誰かの気付きやきっかけになれば嬉しいです。
だって、あなたはこの世界にやってきた転生者。ここは常識さえ誰も教えてくれない異世界なのですからね~。
それでは、なろうの案内人こと私、ひだまりのねこと新人書き手くんの異世界風の会話劇をお楽しみください~。始まり始まり~。
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Illustrated by みこと。さま
おや? また新たな転生者(新規ユーザー)がやってきましたね。
おそらく、ここ小説家になろうのランキング小説を読んで、自分でも書ける、書きたいと思ったのでしょうね。ふふふ、お可愛いこと。まるで過去の自分を見ているようです。
『ようこそ、小説家になろうという異世界へ』
私は、木の上から新人転生者を見下ろします。
「うわあっ!? ね、ねこが喋った!!」
『ふふっ、何を今更。ここはねこはおろか、虫や棘皮類ですら言葉を話し小説を書く世界。そういう貴方こそ、スライムではないですか。口も無いのにどうやって声を出しているのやら……なるほど、某名作に影響されたのですね』
「だ、だったら何なんです。わ、悪いですか!? っていうか、あなたは誰なんです?」
『別に悪くはないですよ? 私はひだまりのねこ。この小説家になろう界に住まう先輩ユーザーです』
ふふふ、先輩、じつに良い響きです……。
「なんだ、先輩でしたか。俺は酢ライムです。今日からお世話になります!!」
ぷっ、酢ライム? ずいぶんと酸っぱそうなお名前ですね……ふふふ。
『ところで酢ライムさまはその小説を投稿するのですか?』
すでに手元には原稿用紙の束が見える。スライムなので、実際には半透明な体内にプカプカ浮いているようにしか見えないけれど。
「ふふふ、すでに8割がた書き終えているんですよ。ありきたりじゃない最高に面白いファンタジー作品です。これ多分、投稿したらランキングを駆け上がって、書籍化やコミカライズのオファー待ったなしですよ」
『……ちなみにどんな感じのお話なんですか?』
「スライムが現代日本に転生してチート無しの普通の高校生になるお話です」
……それ、もはやただの高校生じゃ?
『……そ、そうですか。でもいきなり大勢の人に読まれたり、ランキング入りするのは難しいと思いますよ?』
「へ? そうなんですか? でも、内容には自信があります!読んでもらえれば必ず人気が出るはず」
『そうかもしれないですね。でも、この世界では、そもそも読んでもらうことがとても難しいのです』
「で、でも最大級の小説サイトで、読者数もすごいんでしょう? だったら読んでくれる人もいるんじゃ?」
『ふふっ、確かに読者数は圧倒的です。けれど、そうですね。読まれない理由は実際に見てもらった方が理解できると思いますよ』
やってきたのは、山奥にポツンと立っている一軒家。周囲は道路すら整備されておらず、辛うじて電気は通っているのが救いだ。表札には「酢ライム」と書かれている。
「あの……もしかしてここが?」
『はい、そうですよ。ここが貴方の家であり、お店です。提供する料理(小説)はお好きに決めていただいて大丈夫です』
「え? だって、お客さんは? こんな山奥、誰も来ないに決まっているじゃないですか!?」
『だから、沢山のお客様に来店(読んでもらう)してもらうのは難しいと申し上げたのです。最初は皆、ここからスタートするのですよ。この状態では、たとえ三ツ星シェフ(超人気ベストセラー作家)でもどうしようもないでしょうね。どんな美味しい料理(小説)を創ったとしても、やってくるのはせいぜい獣ぐらいでしょうから』
「そ、そんなああああ!!? じゃあ一体どうすれば?」
『ちなみに、貴方は固定ファン(SNSのフォロワーやファン)を持っていますか? もしいるのなら、告知すれば山奥だろうがファンが押し寄せてくるかもしれませんが……』
「いや、いないです。そもそも周りには小説書いている事内緒にしてますし……」
絶望的な表情を浮かべる酢ライム氏。
『大丈夫ですよ。お客さんを呼ぶ方法はあります。作品をそのなろうポストへ投函(投稿)すればいいのですよ。投函された作品は、瞬時に王都の大通り(トップページ)の掲示板(更新された小説)に貼り出されますから、それを見たお客さん(読者)が来てくれるかもしれません』
「なんだ……驚かさないでくださいよ。それなら安心じゃないですか。すぐにお客さんで一杯に……」
『残念ですが、そう簡単にはいかないのです。いいですか、王都の掲示板に貼れるのは、連載小説ならばたったの十件、この世界には、現在2,128,603人の転生者がいます。その全員が作品を投函するわけではありませんけれど、仮に1%が参加しているとしても、約2万人です。運良く掲示板に貼り出されたとしても、次の瞬間、あっという間に貼り替えられてしまうのです』
「そ、それはきついですね……なんだか来店してもらえる気がしなくなってきました」
『さらに厳しい現実を伝えなくてはなりません。確かに王都は人は多いですが、ほとんどの人々は、掲示板など見ずに中央通の人気店(上位ランカー)のお店で食事をすませてしまうのです』
ガーン。そんな音が聞こえたような気がしました。
「そ、そんな……唯一の掲示板すらそんな状態でどうやって来てもらうんだよ……」
『だから最初に言ったではないですか。ランキングに載る以前に読んでもらうことはとても大変なことなのですよ。大丈夫、これから私の連載エッセイを読めば、ヒントがつかめるかもしれません』
「……もしかして宣伝ですか?」
『はい! そうですよ。次回から一緒に頑張りましょうね!』
Illustrated by 空野奏多さま