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ひだまり童話館(参加作品・過去お題作品)

六地蔵の山道

作者: 天神大河

 (むかし)むかし、()()(ない)(かい)沿()(さん)(よう)(どう)()(ちゅう)(やま)(みち)に、(ろく)(たい)のお()(ぞう)さまが()っておりましたそうな。


 その()(ふる)くからあったお()(ぞう)さまは、(どう)()(じん)として、(みち)(とお)るお(ひゃく)(しょう)(ちょう)(にん)、お(さむらい)にまでたいそう(だい)()(あつか)われておりました。


 しかし、(なが)(ねん)(げつ)(とも)にお()(ぞう)さまのあった(みち)(すた)れ、お()(ぞう)さまを(おぼ)えている(ひと)もいなくなってしまいました。


 そんな(なつ)のある()(ひと)()(わか)いお(ぼう)さまが(きょう)(みやこ)から(きゅう)(しゅう)への(たび)()(ちゅう)、お()(ぞう)さまのある(やま)(みち)()()かったそうな。


 その()(あさ)から(きび)しい(あつ)さが(つづ)き、ずっと(ある)(とお)しだったお(ぼう)さまはしばし()(かげ)(やす)むことにしました。


「ふう、今日(きょう)はひときわ(あつ)いのう」


 お(ぼう)さまが(ひたい)(あせ)(ぬぐ)いながら、ふと(みち)(はず)れに()()けると、(ぜん)(しん)(こけ)()やした(ろく)(たい)のお()(ぞう)さまが()っておりました。


「おや、あんなところにお()(ぞう)さまが。どれ、(たび)(あん)(ぜん)(ねが)ってお(まい)りしていこう」


 そう(おも)ったお(ぼう)さまは、お()(ぞう)さまのもとへ(あゆ)()りました。(まぶた)()じてお(まい)りをした、その(とき)です。


(ぼう)さま、(ぼう)さまや。この(みち)(さき)にある(よう)(りゅう)()()かうのじゃ。()いか、(ゆう)(こく)までに()くんじゃぞ」


 どこからか(ひび)いた(こえ)()いたお(ぼう)さまは、(あた)りをきょろきょろと()(まわ)します。しかし、(しゅう)()(ひと)(かげ)はありません。


 やがて、お()(ぞう)さまに()(なお)ったお(ぼう)さまは、(なか)()()()そうな(おも)()ちで(くち)にします。


(いま)のは、お()(ぞう)さまのお()げじゃろうか。こうしてはおれん、(よう)(りゅう)()()ってみよう」


 こうしてお(ぼう)さまは(やま)(みち)(ある)(はじ)め、()(しず)(まえ)(よう)(りゅう)()へとやって()ました。


 (てら)(じゅう)(しょく)()うて、(てら)宿(しゅく)(ぼう)()りることにしたお(ぼう)さまでしたが、その()(よる)から(はげ)しい(あめ)()(はじ)めました。やがて(あめ)(ぼう)(ふう)(ともな)った(あめ)となり、(みっ)()()(ばん)にわたり()(つづ)いたのです。


 (ぼう)(ふう)()(おさ)まった(あと)、お(ぼう)さまは()(なん)のため(てら)にやって()ていたお(ひゃく)(しょう)から、お()(ぞう)さまのあった(やま)(みち)()(しゃ)(くず)れで()まってしまったことを()きました。


「これは、(おどろ)いた。よもやお()(ぞう)さまが、このために(わたし)(てら)(みちび)かれたのだろうか」


 そのことを()ったお(ぼう)さまは、(いち)(れん)()()(ごと)(てら)(じゅう)(しょく)(はな)して()かせました。


 それから(ほど)なくして、(やま)(みち)(ふっ)(きゅう)(はじ)まりましたが、()(しゃ)()まったお()(ぞう)さまはとうとう()つからなかったそうです。


 そこで、(てら)(じゅう)(しょく)から(はなし)()いていた()(もと)のお(ひゃく)(しょう)たちは、()わりの(つか)(みち)(そば)()てて、お()(ぞう)さまをいつまでもお(まつ)りしたのでした。


 (むかし)むかし、()()()なお()(ぞう)さまにまつわるお(はなし)でした。




(ろく)()(ぞう)(やま)(みち)/おしまい

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― 新着の感想 ―
[良い点] まるで昔から語り継がれている伝承を聞いているように、スッと読者に入り込むお話でした。こういった昔話を読むとどこか懐かしいような落ち着く気分になる日本人は多いのではないでしょうか。 お地蔵様…
[一言] 「ひだまり童話館」から拝読させていただきました。 自らを拝む若いお坊さまを救わんとしたお地蔵さまに、素直に従ったお坊さま。 代わりの塚を作って、埋もれてしまったお地蔵さまを祀った地元のお百姓…
[良い点] 雰囲気のあるいいお話でした。 本当に山陽道沿いのどこかの土地に伝わる民話のようです。 6といえば六地蔵がすぐ浮かんできそうなものなのに、ちっとも思いつきませんでした。 消えたお地蔵さんたち…
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