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あの桜はまだ燃えているか  作者: 濱野乱
りゅうおうのおしごと
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拘留


俺は昨夜過ごした寺で、お沙汰を待つことになった。


問答無用で寺の座敷牢に押し込まれ、自由を奪われる。俺にやましい部分はないが、犯罪者の烙印を押されたようで堪えた。


リヒターと話したいと申し出るが、却下された。あいつは間違いなくこの組織の幹部だ。俺の無実を証明するには、出馬してもらわなければならない。


狭く窓のない座敷牢で、竜王のことやエチカのことを考えて過ごした。疲れて眠ると、逃げた敵が俺を殺しに来る夢を見た。


目覚めても、昼か夜かもわからない状況に疲弊する。若い坊主が握り飯を運んでくれたが、ぬぐい切れない不安がどんどん増して喉を通らなかった。


僧が飯を三度ほど差し入れた後だったか。突然、牢から出ろと言われ、寺から追い出された。当然のように太刀が没収されたが自由の味には代え難く、無言を貫くしかなかった。


寺の門に人がいる。逆光を背に立っていたのは、神官のアテナだった。白いジャケット姿にスカート、腰に手を当てふんぞり返っている。


「なんでここにいるんだ?」


俺が疑問をぶつけると、アテナは優越感をにじませ高笑いする。


「ふっふっふ、何を隠そうショータ君の身元引受人になったのはこのアテナなのです!」


さあ、感謝しろと言わんばかりの恩着せがましい態度に嫌気が差し、俺はアテナの脇を無言で通過する。


「無視! アテナ頑張ったのにひどい!」


長屋に急ぐと、アテナもちょこちょことついてきた。ヒールになれていないのか、歩みは遅い。一応借りがある身だ。歩調を合わせる。


「竜王が手を回したのか」


「そうだよー、リリスちゃんに感謝しないとね」


竜王本人が現れないのが気に掛かる。あの修道女は捕らえられたのだろうか。俺は情報に飢えている。


「俺が捕まって何日経つ」


アテナは脳天気に指折り数えた。


「えっと、五日かな」



今日も長屋は騒がしい。エチカが暴れているのか、女の悲鳴が外にいても聞こえる。


「おい、竜王はいるか」


もう何度目になるか知らないが、俺は竜王を呼んだ。あいつは少し頼りない足取りで顔を出したり……、しなかった。


代わりに飛び出してきたのは、見知らぬ少女だった。乱れたショートの黒髪に白いシャツ、何故かズボンもスカートも履いていない。少女は勢いをつけて俺に抱きついてきた。


「すみませんすみません! 助けて下さい」


必死なのは伝わってくるが、少女の控えめな胸で顔が圧迫され、喋らせてもらえない。部屋を間違えたか。それにしても助けてとは穏やかではない。


「ショータ、おかえり」


エチカの声がすると同時に、俺の拘束は解かれた。俺に助けを求めていた少女はエチカに首根っこを掴まれ、地面に倒れている。


「無事でよかった。ショータに何かあったら、あたしあの寺を焼き討ちにするところだった」


物騒なことを言いつつ、エチカは胸をなで下ろしている。こいつにも心配をかけてしまったな。砦で別れたきりで、ようやく互いの安否を確認できた。


「お前も無事で何よりだ。ところでこの子はお前の知り合いか?」


俺が説明を求めると、エチカは恐怖に震える少女の髪を掴み上げた。


「この女はスパイだよ」


てっきり知り合いか何かだと思っていたので、状況の把握に手間取る。どこにでもいるような控えめな少女に濡れ衣を着せようとしているようにしか思えない。


「誤解です。私は砦の近くで地層の調査を行っていただけなんです」


「嘘をつくな! リリスの枝を盗もうとしてただろうが」


エチカが動かぬ証拠を提示し、わめき散らした。経緯を聞くに、俺が去った後にこの少女が火事場泥棒のような真似を働いたらしい。


どちらの言い分を信じるか、俺の中で答えは決まった。


「エチカ、そいつを離してやれ」


「……えっ!?」


エチカが動揺した隙に、少女は戸外に逃げ出した。脱兎のような動きからしてただ者ではない。追跡は難しいだろう。


「大事の前の小事だ。スパイの尋問は後でもできる」


「決断力のある男ってステキ♡」


エチカの手前格好つけたが、早まったかもしない。俺も汚名を着せられた身で、判断を誤ったか。スパイごときが竜王を出し抜けるとは思わないが、念のため後で報告しておこう。


「ところで竜王の姿が見えないが」


「リリスは神社に……、あっ」


エチカは、慌てて口を噤む。俺は何らかの秘密の臭いをかぎ取り、重点的に追求した。それでも竜王の居所を聞き出すのに時間を要した。

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