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あの桜はまだ燃えているか  作者: 濱野乱
りゅうおうのおしごと
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俺は逆境を翔び越える男、翔太!!!!!!!!!!

やることなすこと上手くいかないのは誰のせいか。


三万円も課金したのに、レアガチャは引けなかった。新規実装された武器、童子切り安綱を狙っていたのだが、掠りもしない。これさえあればあいつに近づけたかもしれないのに。


虎の子のマネーを使いきり、目の前が暗くなる。もはや後悔を通り越して罪悪感が刻まれる。近くに教会があったら足を踏み入れていたかもしれない。だが実際に教会で懺悔したという奴も悔い改めた奴も俺は知らない。併せて語られる清廉なシスターも都市伝説なんだろうきっと。そうでなかったら教会に毎日行列ができているはずだし。


ここまで落ちるまで色々な事があった。出会いと別れ。俺には先月まで付き合っていた彼女がいた。同じクラスの真美という女だった。曲がったことが嫌いな委員長タイプ。でも自分にも厳しいから周りは何も言えない。


その割に嫉妬深くて、クラスの女子がちょっと目立ったりすると後で俺に愚痴ったりする。裏垢にでも書いとけそんなもの。全く困った奴だ。


「私の方がいいよね? 私は間違ってないよね?」


自分に自信がないから他人のアラを探して安心したいのだ。それがわかった途端、俺の中で真美は委員長ではなく単なるあら探しマシーンと化した。その矮小さに愛着が湧いたのだ。俺も大概変わり者だな。


俺のアラも探るかと構えたがその兆候はなかった。それもそのはず、俺は文武両道完璧な存在だったからだ。リーダーシップを発揮し、問題解決能力にも定評がある。包容力もあり昔から女にもてた。有名私立高校に通い、億ションで暮らす。将来国を動かす人材筆頭。俺の前途を阻むものは何もない。


「なあ、教えてくれ。俺の欠点はなんだ。敗北を知りたい」


真美は俺の目をぼーっと見つめてこう言った。


「えー、ないよー。翔ちゃん優しくてすっごい可愛いし。強いて言うならちっちゃくて可愛いとこかな。抱っこすると落ち着くの。地球温暖化も見て見ぬふり出来るの。ずっと可愛いままでいてね」


俺は取り乱したりしなかった。

知ってたさ、俺の身長が低いことくらい。小学校高学年から成長は鈍化し、中二で完全に止まった。生来の童顔低身長は克服しがたい試練を俺に与えたのだ。


だが、俺は背の低さを言い訳にしたことは一度もない。陰でなみなみならぬ努力をしたかいもあり、他人の後塵を拝する経験は皆無だった。逆に背が低かったことに感謝してるくらいだ。逆境にThanks!


そして俺がモテるが故の悩みなのだが、知らない上級生の女に急に抱きつかれたりして戸惑ったことが結構ある。女の体は柔らかいとよく聞くが、極論、脂肪の塊でしかない。何の用意もなく体当たりされたら、最悪押し倒されることもある。さすがに男としてそれは情けないだろう。毎日筋トレしてるから、倒れたことないけどな!


あら探しの天才真美ですら俺の欠点を見つけることは叶わなかった。自分の才能が恐ろしい。末は博士か大臣か。レアルマドリードでプレイするのもありかもな。考えておこう。


常に大志を抱く俺だが、謙虚さを忘れてはいないつもりだ。優れた人間は自分の欠点を正確に把握する必要がある。井の中の蛙じゃ話にならないからな。社会に出るまでになんとしても知る必要があった。適当に色々な業界に首を突っ込んでみたがどいつもこいつも了見が狭すぎる。規制、年功序列を建前に俺を締めだそうとする。凡夫共め、これが巷を埋め尽くす畜群という奴らか! 


いつの間にか俺は自分の欠点を探しだそうというより、自分の活躍できる場を求め始めていた。まるで真美が俺に住み着いたみたいだ。いや、他人のせいにするのはよそう。自分の居場所は自分で見つけないとな。


狭い箱庭を飛び出し、最終的に俺が選んだ戦場はスマホゲーだった。これらのゲームは基本プレイをするだけなら無料だが、貴重なアイテムはなかなか手に入らないようになっている。課金すると若干手に入りやすくなる。それでも確実というわけではない。一回当たりは少ないからと何度も課金するといつの間にか歯止めが効かなくなる。


美麗なイラストもアイテムも、プレイヤーから金を集めるための呼び水に過ぎない。飲めば飲むほど乾いていく。まるで塩水だ。通称札束で殴り合うゲームと呼ばれるのも納得がいく。


何十何百万という大金をたかがデータと交換するなんて馬鹿げていると正直思っていた。


金がある奴が有利なのは当たり前だ。現実ですら、教育の機会も人脈も格差が生じる。


俺はその当たり前を覆したかった。富めるものはいつまでも富み、貧しいものはいつまでもそのままだと誰が決めた。階層の固定化など愚の骨頂。同じ所に止まった水は濁り、やがて腐る。


スマホゲーはその点において社会の縮図といえる。これ以上ない課題に触れ、俺の血は沸き立ったのだ。


若くして真理に至った俺は人々を啓蒙する義務がある。かつて思想の雷に打たれたというルソーと同じように、俺も人々を導かねばならない。たとえ石を投げられようと孤高を貫くと宣言しよう。


俺は逆境を翔び越える男、翔太。A○pStoreをタップし、今一番ヒットしているゲームを選択。Venus Athena frontier をスマホにインストールした!!!

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