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走馬灯

走馬灯で見る風景は、暖かい暗闇で誰かの寝息と男たちの話し声が聞こえた。


「して、実験結果はどうなっている?」


「申し上げにくいことなのですが、献体Dの実験は失敗だと言わざるおえません」


俺は前世の記憶をもっていた。だから羊水の海の中でも、意識をもつことが出来たのだろう。


「詳細を述べよ」


「はい。献体Dは、予想された失敗した場合に表れるもっとも可能性の高い結果、忌み子です」


「ふん、鬼の子として生まれるというのか。もとは人だ。本人ではあるまい」


「そのように推定されます」


「では、献体Dは計画通り、破棄の方向で進めよ」


吐き気すらもよおすほどの冷徹なやり取りだ。連中はただ者ではないだろう。


「一つの問題と提案がございます。ここまで育つと、現時点での破棄は母体に悪影響がでます。そして、実際の出産までの経過を観察したく存じ上げます」


「わかった。出産後、献体Dは破棄とする。その際、母体が忌み子を破棄するよう提案した場合は、引き続き母体として利用する。もし、忌み子を産み私に判断を任せるような愚鈍なら、もう必要ない。母体も破棄とする」


場面は変わって、俺が産まれたときに移る。


「残念ながら、忌み子にございます」


俺の目の前にいる母体は、涙を流し絶望しているようだ。付き添いの女、俺を捨てに行った女もいる。


「わかりました。この子は死産であったと致します。後は、良しなに」


走馬灯が終わると、俺は海へと堕ちていった。その瞬間、黒い影に覆われたのを覚えている。



次に目覚めたのは、森が迫る海岸沿いだ。


人の気配がしたから目覚めたのだろう。俺が泣き叫ぶと、そいつはこの脆弱な体を抱き上げた。


金髪金眼の長い耳が見えた。胸には金翼の飾りがある。


その美しい顔は、酷く森厳で少女に神秘的な雰囲気を与えていた。


が、まぬけに歪む。


「どうしましたか、僕ちゃん? 独りで寂しかったですか? あっぷっぷ」


さっきまでとは酷い落差だ。なんて、能天気な声を出す女だ。


流石の俺でも、この急展開にはついていけず、赤子ながら、唖然としてしまった。


赤子を唖然とさせるとは、スゲー女に捕まったものだ。俺のシリアスなはずの人生の、先行きがスゲー不安になった瞬間でもある。


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