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第二話

クリスマスイブ。


年末の、・・・いや、一年を通して考えてもこれほどのイベントはないのではないかと思えるほど、街はクリスマス一色に染まっていた。老若男女関係なく、下手すればキリスト教や仏教という宗教の概念も関係ないのではないかと思う程、クリスマスは人々を歓喜させる。


擬人化した月の女性たちは祝祭日を自分のステータスのように感じていたが、12月になるとその休みですら色あせて見える。前日の12月23日、天皇誕生日よりも宗派でもないキリストの誕生日を祝うのはどこか矛盾しているようにも思えるのだが、それを疑問視できないくらい、クリスマスイブはゆるぎないイベントになっているのだ。


というわけで、そんなクリスマスイブならば、仕事に忙殺されていた師走さんにも僅かな休息を与えてくれるのではないかと思ったのだ。僕は街の中を師走さんの姿を求めてさまよい歩いた。行くあてもなく歩いて彼女を見つけられるはずはないかもしれないが、僕は信じていた。月の重大イベントに関わる場所にはその姿を見つけることが出来るかもしれないと。


「師走さんなら、その広場を歩いていたわよ」


 僕にそう声をかけたのは6月の水無月さんだった。彼女は黒いコートを着て寒そうに体を丸めた。夏の月である彼女にはこの季節は辛いのだろうが、それでもこのシリーズに頻繁に顔を出し、時にはツッコミを入れて、愚痴や毒を吐く彼女は頼りになる女性でもあった。


「さすがは水無月さん、頼りになりますね。それじゃあ・・・」


 僕は水無月さんに頭を下げて師走さんの元へと走った。


「ちょい待ち!!私の出番はこれで終わりか?」


「師走さんは盛りだくさんで無駄な時間はないんですよ」


「私はある意味、師走さんとは対照的な存在よ」


「確かにイベントだらけで忙しい師走さんとは違いますよね」


「そういう意味じゃない!!12月には冬至があることを忘れているわよ」


 僕はそこで感嘆の声を出した。確かに忘れていた。冬至は一年で最も夜が長い日である。そして水無月さんの6月には夜が最も短い夏至がある。確かに対照的だ。


「しかし、昼の長い方が特にイベントが少ないのは、よく考えると矛盾していますよね。まあ、大概の人は冬至を意識することなくクリスマスの方に気持ちが向いていますけどね」


「だから、私は師走さんの回にも出てきて、夏至と冬至の関係を語り合わなければならないのよ!!」


「いや、それをしてもあまり盛り上がらないと思いますよ。今回のメインはクリスマスですし、冬至はこの際、省かせていただきます。」


 僕がそう突き放すと、水無月さんは何か言いたそうな顔をしたが、特に何も言わずに僕についてきた。下手に話を長引かせると今後、登場の機会を失うことを危惧したのかもしれない。とにかく、僕は急いでいるのだ。このシリーズに当てられたスペースはそんなに多くはない。その中で師走のことを書き連ねようと言うのだ。無駄なことはなるべくしたくない。冬至を軽視するつもりはないが、そこまでの余裕はないのだ。だから、僕は師走さんの元に走った。水無月さんも僕の後に黙ってついてくる。


 そして、僕らは師走さんの姿を見つけた。広場に一人立つ彼女の姿を。僕らは彼女の姿を見て強い衝撃を受けた。彼女はクリスマスイブであっても忙しかった。それを彼女の姿が証明している。彼女は赤いコートを着ていた。白いふさふさがついた赤い帽子もかぶっていた。白い口髭までつけて、白い大きな袋を抱えている。それはクリスマスに夢と希望を与えてくれるあの偉大な人のようだった。


「・・・・師走さんがサンタクロースだったのか・・・・」


 僕は呆然と師走さんを見ながら言った。


「そんなわけないでしょ。あれはバイトよ、バイト。ケーキの販売か、客引きか、この時期、何でもサンタの格好をさせたがるのよね」水無月さんは呆れたように言った。


「この時期は色々と出費が多くて、バイトでもしないとやっていられないのよ」


 僕らに気づいた師走さんは、疲れたようにため息をつきながら言った。僕はその姿を見て悟った。クリスマスに愉しむ人が多いと言うことは一方で、愉しませる側の人間も多いと言うことだ。それはクリスマスも忙しい人が多いということでもあった。僕はサンタ姿の師走さんを労うように言った。


「師走さん、メリークリスマス、・・・・お疲れ様です」


 わざわざページ数を使って、こんなオチでよかったのかと、思わないではない年末の出来事でした。


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