夜の妖精Ⅱ
今回はメーゼ目線の過去編です。
メーゼがまだ幼かった頃の話。
この小説でリクエストの挿絵があるか募集しようとおもいます。
詳しくはのちほど活動報告で募集しようとおもいます。
オレはこの世界に生まれてまもなく、夜の妖精の月属として将来使命に従う『オオカミ型の妖精』として、昨日までの人生で他の妖精に仲良くされることなんて一度もなかった。
――そう、昨日までは。
*****
たくさんの木が日光の光を隠し、木々の風が揺れる静かな音と、木陰で暗くなり葉から漏れ出すわずかな光が照らすような森。
ここは『月夜の森』夜型の妖精たちにとってはとても心地好い場所なのだろうが、オレという存在がいると、どんな場所でも誰もが恐れる孤独席へと変わってしまう。
オオカミ型の妖精は、地球という星のオオカミとは体格や大きさが少し小さい方で、強いて言うなら毛の量が少し多いくらいで、この星には他の妖精を食べてしまうような肉食の妖精など存在しない。
簡単に言ってしまえば、この星のオオカミ型はまったく恐れられない姿をした、平和的妖精なのだ。
しかし、ごくまれに百匹中の一匹の可能性で、地球のオオカミとほぼ変わらない姿のオオカミ型妖精が生まれてしまうことがある。
その一匹がこのオレだったのだ。
オレは生まれた瞬間に不幸な人生を選択されていたんだ。
それからの人生は案の定最悪で、目が合うだけで威嚇されたと怖がられたり、たまたま近づいてしまっただけで特になにもないのに「助けて!」と悲鳴をあげられ、今まで一度もこちらに歩みよってくれる奴なんていなかった。
ムカついたことに、こんな扱いをされ続けてあるもんだから、今となっては誰かに避けられる前に自分から一人でいようとすることが多々あるのだ。
オレは何もしていない。誰かに危害をくわえた訳でもない。ただ他とは姿が違うだけなのに。
なのに、これじゃまるで恐れられるのが恐くて自らそれに触れたくなくて逃げているようで、こんな自分がとても弱々しくみえてとても腹が立つ。
自分の意識を持ち始めた頃からが一番の苦しみだった。
まだ相手の気持ちなんて理解できない頃は、自分からみんなの集まるところへ元気に向かい、目が合うとなぜかみんなは恐ろしいようなものを見た目をして早足でかけて去っていく姿を疑問に思いながらも構わず一人で遊んでいた。
でも、体が成長していくにつれ、知識も能力を高まっていき、その時気づいてしまったんだ。
――みんながどんな目でオレを見ていたのかを。
みんなが向けていたオレへの目は、恐怖にとても似た気持ちを持っていて、その時気づいてしまった時には自分への絶望感や悲しさ、寂しさ、そしてたくさんの『孤独』が記憶の回想と共に溢れだしてきて、その瞬間は今でも忘れられないほどの強さを持っていた。
そんなオレの居場所は誰かが与えてくれるわけでもなく、自分の力で探し出すしかなかった。
ようやく見つけた場所には、周囲をたくさんの木に囲まれた、とても静かで人気のないところで、少し規模が小さいが、この近くには充分な水と木の実があるような場所で、一人静かに過ごす『オレだけ』の居場所には最適な空間だったのだ。
そして、今日もこのまま何もない一日が終わろうとした満月の夜。
そう思いながら、中央にだけ空いた木々の中から月の光を目を閉じ浴びていると、どこからか誰かの足音が聞こえてくる。
その足音からするに、おそらく小動物系の妖精なのだろう、足音はだんだんとよく聞こえるようになり、どうやらこちらに近づいているらしい。
もしかしたら月を眺めに来たのかもしれない、そんなオレの予想はあたったようで、足音の正体は姿を見せた。
正体は朝の妖精の小さなウサギ型だった。
美しく輝く赤い宝石を首本に飾り、額にも同じ様な宝石があった。
容姿はとても可愛らしく、こんな自分とは違い、きっとたくさんの友達をもっているだろう。
その妖精はこちらと目が合うと、しばらく固まり、立ち尽くしていた。
やはりオレが怖かったのだろうか、先客がよりにもよってオオカミ型の妖精で驚き、ビビってしまったのだろう。
しかし、そんな自分の予想などはずれて、ウサギ型の妖精は言葉を発した。
「・・綺麗だね。」
先程のオレの予想は、どうやらその先の自分自身の予知だったらしく、今度はオレ自信が固まってしまった。
こんなこと初めてだった。
こんな風に誰かに話しかけられるなんてことは、今まで一度たりともなかったのだから。
自分でも可笑しいことを聞くのは承知で、ニコリと微笑むウサギ型の妖精に問い掛けた。
「お前・・・・オレが・・怖くないのか・・?」
怯えながらそいつに問うと、その返事は、今までの孤独な思いをした自分を救うような、温かい言葉が返ってきた。
「どうして?なにもしてない子を怖がるなんて可笑しいよ?むしろさっきの君、とっても綺麗だったもん!」
その言葉には、先程言っていた言葉の意味が表されていた。
あいつの言う綺麗は、オレに向けての言葉だったのだ。
こんなこと初めてで、誰かに怖いという言葉以外を言われる経験なんてなくて、こんな自分自身も憎くて大嫌いな存在だったのに・・・。
嬉しくて嬉しくて今にも涙が出てきてしまいそうなほどのどこか闇の中に眠り続けていた幸福感が心のそこから沸き上がるように空の心を満たしていくのが分かった。
すると、しばらく固まり続けていたオレに、今度はあいつから問いかけてきた。
「ねえ、名前は?」
「・・・メ・・・」
「んん?メ?」
「メ・・・メーゼ・・・。」
久しぶりに口に出した自分の名前。
名前なんて、この先ずっと使わないだろうと思っていた言葉なのに。
「そっか、メーゼ君!」
教えた直後にあいつはオレの名前を口に出した。
それだけでも衝撃で、心に溢れるほどに嬉しかったのに。
「私とお友だちになろ!」
その言葉は何よりも自分自身があの時から一番欲しかった言葉で、オレの『寂しさ』を一瞬で消すような、とても温かくて、裏表のない素直な気持ちだった。
そう言った後、まっすぐにオレの元へと歩みよってきて、その小さな手で、オレの冷たくなっていた大きな手を優しく包み、オレを見つめてまた微笑んだ。
何かを思い出したように急に急ぐウサギ型の妖精は、「じゃあね」と告げ、急いで道を戻ろうとする。
オレはまだあいつに何も言っていない。
いつものように意地を張っているせいで、なかなか言葉を口に出せない。
でも伝えないと、ちゃんと。ちゃんと言いたいことを。
決意したオレは言葉を口に出す。
「・・・・あのさ・・・!!」
オレが大声で呼び止めると、あいつはくるりと方向を変え、オレの方に目を向けた。
「名前・・!お前の名前、知らないんだけど・・・!」
普段、自分がどれだけ意地を張っていたのかを今このとき後悔するほど感じている。
でも、返ってきた言葉は――
「シャイン!太陽属のシャイン!」
シャインはニコニコしながら自分の名前を口にした。
そしてオレはもう一つの気持ちを伝える。
「えぇとっ、と・・友達とか、別にならない訳じゃねぇから・・・!」
途中少し行き詰まった不器用な言葉を発すると、その返事を待っていましたと言うばかりに今よりもさらにパアッと表情を明るくして、声に出さずに何度も頷いてくれた。
シャインがまた背を向け、オレに向かい「また来るから!」と告げ、どんどんと遠くへ行き、やがて姿が小さく見えたとき、何かの感情が急に込み上げていき、気がつくと目から大粒の滴がこぼれ落ちてきた。
その瞬間、シャインにもらったたくさんの言葉を思い出すと、さっきとは違う、幸福感と閉ざされていた心への解放感で、気がつけば沢山の涙で顔がくしゃくしゃになるほど泣いていた。
――朝の妖精、太陽属のシャイン。
――オレはあいつに一目惚れした。
最後までありがとうございました!
今回はとても長くなってしまい、すみません!!
目、疲れませんでしたか?
未だに執筆のやり方を理解していないので、とても読みにくいと思います。(´・ω・`)