第5話
これからはどんどん書いていくぞー!!
今回は文字数少なめです、申し訳ありません……。
ある程度、体が育ち僕はハイハイをすることができるようになった。それにより僕の行動範囲は広がり色々な場所を移動できるようになっていた。
きっと他の赤ちゃんとは逸脱した早さでハイハイができるようになったからだろう、うちの親は――
「あれぇ、何か……聴いていたより早いわ? もしかして――うちの子は天才なのかしら!?」
等と大騒ぎし親バカっぷりを発揮していた。
ハイハイができるようになったので家の中を数日に渡り探索した結果、僕の家は豪邸(前世基準)だった。文明レベルは高くないとしても、敷地は日本にあったとしたら北海道ぐらいでしか確保出来ないだろうと思われるレベルで広大さを備えていた。
今日はそんな家の中の書斎に来ていた。だが、家の広さとは対照的に書斎はとても小さいもので、とは言え前世の俺の家の一室――道場だったためそれでも日本の一般家庭よりは広い――に比べればこちらの方が大きいが。飽く迄も他の部屋と比較した場合である。
ここの狭さの理由を考えてみた。
テンプレ的に考えると印刷の技術が進んでないから、とかそんなものだと思う。
修練の片隅や寝る前などにはラノベをよく読んでいたため、割とそういう知識は頭に入っている。
因みにこの事は僕の家族と美夏ぐらいしか知らない。
そんなことはさておき、本棚に近寄り本を手に取ろうとする。が、本は隙間なく並べられているため摩擦力が強く子どもの、しかも赤子の腕の力では抜き出すことは出来ない。
それでも本を抜き出そうと奮闘していると、後ろから手が伸びてきて、いとも容易く本を抜き取ってしまった。
「これが読みたかったんですか、お坊ちゃま?」
手が伸びてきた方を見てみると腰を落とし僕の方へ優しげな微笑を向ける茶髪の可愛らしいメイド、リーザがいた。
現年齢で言えばリーザの方が断然歳上なのだが、僕の前世の年齢と同じぐらいに見えるせいで、リーザさんと呼ぶのに違和感を覚えるのだ。
そうなんだよ、ありがとう。
その意志を伝えるべく、頷き――赤子らしい笑顔を浮かべてみる。
「わっ! 言葉が通じてるし、それに……かわいいッ!? もうダメ! なんと言われようとギュッ、ってしちゃうもんね~!」
興奮した様子で小さな僕の体を豊満な胸に押し付けてきた。
それから僕の顔にずっと頬ずりを続けたが、僕は早く本を読みたいのだ。
今度はその意志を伝えるべく、赤子らしく不満の声をあげる。
「ぶー!」
「へっ?? あ、ごっ、ごめんなさい!」
ようやく身動きが取れない僕の不満に気づいたらしく慌てて僕を元の場所に降ろしてくれた。そして僕は本を指さして僕の気持ちを表現する。
「んっ!」
「そう言えば本を読みたいのでしたね。でもなぁ、本は高いし……迂闊に触らせてお坊ちゃまが破かれでもしたらメイド長になんとお叱りを――」
「どうしたんだい?」
こちらに近づきながら男性特有の落ち着く低音な声で言葉を投げかけたのは僕のお父さんだ。
「だ、旦那様っ! それがですね、お坊ちゃまが本をお読みになりたいらしく……」
「ん? そうなのか、リヒト? 偉いなぁ、こんな歳でもう読書かぁ……」
だが何か感慨耽っている様子のお父さんの思考にリーザが割り込む。
「お坊ちゃまに貴重な本を与えていいものかと悩んでいたのですが、よろしいですか?」
「何だ、リーザはそんなことで悩んでいたのか。 リーザがリヒトに本を読み上げたらいいじゃないか」
ナイスアイディアです! お父様っ!!
僕は聞くことはできても、書いたり読むことは出来ないからね。
この世界の言葉を話すことはできるようになったけど、流石にハイハイができるようになってすぐの赤ちゃんが意味のある一単語以上の言葉をぺらぺら話し始めたら怖いでしょ?
あ、でも普通に頷いたりしちゃってるんだよね……たぶんだけど他の赤ちゃんに比べると体は兎も角、5~7か月早い成長を遂げてるはずだから一単語ぐらい意味ある言葉を話しても今更かな? 皆の感覚も麻痺してるみたいだし。
今度、ママとかパパって言ってみようかな。ママの親バカが再発する可能性が高いけど。
「んー、でもその手に持ってる本はなぁ……魔法の教科書だし子どもが読んでも面白くはないよね。そこにある物語とかを読んであげなよ」
「わかりました!」
「あ、そういえば僕は本を取りに来たのだった……。という訳だから本を取ったら僕は戻るよ」
そう言って部屋の正面と左右にある本棚から、1冊の本を抜き取り部屋を出ていった。
「さて、この本にしましょうか」
リーザが選んだ本は、革で出来た表紙に、白い鎧を着た戦士と凶悪そうな竜が描かれた薄めの本であった。
「この本はこの国の人なら誰でも知っているような物語の一つです。私も小さい時はよくお母さんに話してもらったなぁ……」
昔から話し継がれてきた物語を本として残したものなのか。でも日本とかの昔話と違ってこれは実話なのかもしれない。
多少の脚色は加えられているかもしれないけど。
リーザは僕に文字が見えるように本を開いた。その本は各ページに絵があり、文字は少なめの絵本であった。
よく考えたら言葉はもう分かるし、日本と違って複数の文字の種類がないから覚えるのは、さほど難しくないかもしれない。
「むかしむかし、あるところに……」
――そこからはどこにでもあるような勇者物語であった。
邪竜の討伐を白銀の鎧を着た勇者が紆余曲折を経て果たし、その褒賞として爵位を貰う。
そして身分差のせいで婚約を結ぶことができなかったお姫様と結婚し、めでたしめでたし、となる王道的なものであった。
「お坊ちゃま、どうでしたか?」
これを読み終わったリーザが赤ん坊の僕にそう問いかける。
僕は声を出さず、ただ、微笑みを向け面白かった、と伝えようとする。
ごめんなさい、中身は見かけほど純真ではなく容姿を利用する薄汚れた性格です……。
だけど僕の内心はリーザもわかるはずなく――
「あぁ、かわいい……。かわいいよぉ~!!」
一人悶えていた。
次回の更新は未定ですが、そんなに時間はかからないと思います!