第4話
すみません、この話は ・ ・ ・ を乱用しております。
ここをどうにかしたかったのですが、筆者の力不足で出来るだけ文字数を少なくして時間経過を表現するための代案が思いつきませんでした。
次話からは普通になると思います。
そこは一面の闇で、常に温かい何かに包まれているような感じだった。頭はぼーっとしていて働かない。
でも嫌な気分ではなく、ずっとこうしていたいぐらい……。
・ ・ ・
どのくらい時間が過ぎたのだろうか、時間の感覚が麻痺してきた……。
最近、よく何か音が聞こえる。ただそれは雑音のようで、それでいて何か規則性があるように思えた。
高い音と低くあまり聞き取れない音。その二つがよく耳に入ってきた。
だが、やはりまともな思考はできない……。
・ ・ ・
やっと思い出した。
僕は|おじいちゃん(神)に異世界に転生させてもらったのだった。
ということは僕は今、赤ちゃんになってお母さんとなる人の胎内にいるということになるのか。
ならば、あの高い音はお母さんの声で、低く聞き取れない音はお父さんの声なのか。それでこの周りの温かいものは羊水か。
それにしても、僕はいつになったら産まれるのだろうか。
・ ・ ・
何となくだけど自分の名前が分かってきた気がする。
誰かを呼びかけるように同じ音が聞こえてくる、恐らくそれが僕の名前だろう。
でも羊水のせいなのか、ハッキリとは聞き取れないなぁ。まぁ、産まれる前から自分の名前を知らなくてもいいか。
……まだ?? 早く出たいな。
・ ・ ・
僕の体内時計が何十回も720度回転した、ある日。
――黒に白が混じった。
体が押し出される。あまり体の制御は出来ないけど、ひっかからないように気をつけよう……。
ある程度押し出されると、体を掴まれ中から引きずり出された。
おおぅ、ヌルッとしてて、なんか嫌だな。
引きずり出されると直ぐに布のようなもので包まれた。
中に比べると少し寒かったけど、暗闇から開放されただけでも気分的には楽になるね。
眩しいのを我慢して目をうっすら開くと、そこには複数の人がいるのは分かったがピントが合わずよく見えなかった。
……さっきから赤子の声が聞こえると思ったら、僕じゃないか。無意識の内に泣いていた。
確か呼吸を始めるために必要な行為なんだったっけ? まぁ、詳しくは知らないけど……泣き疲れたな、寝よう。
・ ・ ・
僕が産まれてから数ヶ月は経っただろう。
目が発達して物を正確に認識できるようになってきた。
でも、赤ちゃんの体って不便だなぁ。
自我とは別に泣き出すし、漏らすし。しかもとても若い美人なお母さんに、綺麗で大きなおっぱいを飲ませられるし。……ある意味では御褒美と言えなくもないけど。
最初はすっごく恥ずかしかった、でも飢えには抗えなかった……。
僕の今世での家族構成は父母プラス僕だけだ。お母さんはプラチナブロンドのサラサラした艶あるロングヘアー、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいて、前世のテレビでも見たことないような美女であった。
あ、お父さん? お父さんはくすんだ茶髪の優男、中肉中背。
我ながら適当だと思うが、反省はしていない。
そんな絶世の美女と結ばれているお父さんは疑問だ。まだカッコイイ人は沢山いるだろうに。
どこが良くて結婚したのだろうか……。
家族構成はこんなだが、他にも家の中には人が複数人いるようだった。その人たちの職種は服装から明らかに分かり、所謂メイドさんが数人、コックさん、執事らしき渋い男性がいた。他にもいるのかもしれないが、僕の顔を見に来てくれないと自分では出向けないのでわからない。
ところで――
皆さん! リアルメイドですよ! リアルメイド!!
まぁ、だからなんだということなのだけれども。
どうやら、僕の生まれた家はある程度の人がいないと回らないような広さである可能性があることが想像出来た。
家は木製、明かりは蝋燭で、その他、現代では寂れてしまったものまで多数あり、時たまに馬の鳴き声が聞こえてくる。この世界の文明は恐らく、前世ほどは発展していないだろう。
詳しくは僕が成長してから調べようかな、今は行動を起こすには早すぎる――いや、行動を起こせないからね。
まずはこの世界での言葉を覚えないとね。
・ ・ ・
まだハイハイすらできないけど、段々と言葉が分かってきた。きっと赤ちゃんのスポンジのような脳のお陰だね。全然知らない言葉でも格段早く覚えることができた。前世の脳じゃ到底叶わなかっただろう。別に前世は馬鹿なわけではなかったけど。はずだけど。
言葉が分かってきても喋りは出来ない。声帯が発達しきっていないのか、僕が下手なだけなのか。
言葉の種類が区別できるようになって判明したことがある。
僕の今世での呼び名だ。今世では、いや――今世でもリヒトと呼ばれているようだ。
奇妙なこともあったもんだ。もしかしたら神様が運命をそのようにしたのかもしれない。
できんのかな……。確か情報の神様なんだっけ? 出来そうだな。
母親と父親の名前は未だ不明だ。お父さんはママと呼び、お母さんはパパと呼ぶ。そして使用人と思われる方々は旦那様や奥様と呼ぶ。
確か僕が前世で親の名前を知ったのは字を書く練習をしていた時だったはずだ。自分の名前を書けるようになると次に書かされたのは親の名前だったなぁ……懐かしい。
そういえば僕は唐突に死んでしまった訳だけど、悲しんでくれたかな? 今は元気にしているだろうか??
未練はあるが後悔はしていない、皆を助けることが出来たからね。あそこで僕が駆けつけれなかったときを想像するとゾッとする。
因みに今は赤ちゃん専用ベッド? みたいなものに一人で寝ているわけだけど時々人が見に来てくれる。
また誰かが来てくれたようで、扉が開かれた。
「あぁ、リヒトお坊ちゃまはやっぱりかわいいなぁ、きっと将来は旦那様似の素敵な方に……」
そんな事を言いながら僕を抱き上げたのはメイドさん達の一人である、飾りっけはないけど可愛らしい茶髪の女の子だった。
皆もこんな感じで僕を可愛がってくれる、とても優しい人たちだ。ちょっと溺愛気味だけど……。
「でしょ、可愛いでしょー? 私とパパの息子なんだから当然なんだから!」
いつからそこにいたのか、マイマザー。開かれっぱなしの部屋の入口に立っていた。
「あ、奥様! この子を私の子どもにしてもいいでしょうかッ!?」
「何ふざけたことを言ってるの、リーザ。ダメに決まってるじゃない」
そう言ってお母さんはメイドさん――リーザの頭を軽く叩いた。
「いてっ、もぉ半分冗談ですよぉ~」
「半分は本気だったのね……」
これが今の僕の日常である。
今は昼だからお父さんは仕事中だろう、この時間は顔を出さない。というかお父さんがここに来ることは稀だ。
僕だって流石にずっとここに居る訳では無い。皆がご飯を食べるときなどは場所を移る。使用人の方々と一緒に食堂みたいな場所で食べるのだ。お父さんを僕はこういった場所で見る。
でも僕はもちろんそこでは食事は取らない、流石にお母さんも皆の前では肌を晒すことは無い。お母さんが食事を終えた後にお母さんの部屋でおっぱいを吸うのだ。
その後、お父さんがお母さんの部屋を訪ねてきて、家族水入らずの時を過ごすのである。
次話は僕の受験が終わったあとになると思います。
ブクマありがとうございます^^