閑話 王室で
今回はダーリュ目線でお送りします。
「陛下、お呼びでしょうか。」
ダーリュ・リビシェル・コンティークは国王様に呼ばれていた。
「ダーリュ、久しぶりだな。」
ダーリュの目の前には笑顔のジェノア王が座っている。銀髪の長い髪は肩甲骨あたりまであり、太い髪質が髪にボリュームを与え威厳のある姿にさせていた。
「…いいえ。昨日も会いました、陛下。」
「昨日?いやいや、契りを交わした仲だというのに随分とつれないものだな。」
「………………………。」
ダーリュから殺気が漂うが、ジェノアは全く動じなかった。むしろ、それを楽しんでいる。
しかも契りなんて交わしてもいない。
__ダーリュとジェノアら小さい頃からの知り合いで、俗に言う幼馴染みというものだった。そのせいか2人は心から信じあっている。悪口を言ってもなんともないぐらいに。
「俺を呼んだのも訳有りなんだろう?」
やっと態度が崩れたダーリュは腰を落としていた態勢から立ち上がる。2人が幼馴染みに戻った証拠でもある。
そしてジェノアはそれにニコリと笑った。
「でなければ、お前をわざわざここに呼ばない。」
ここは王室だ。ごく限られた人のみしか入ることを許されていない。
「“雨”の正体、分かった。」
「それは本当か。」
「あぁ」
“雨”とは王都の周りの村を攻める謎の物体である。見た目は普通の雨雲にしか見えないが、あの雲に巻き込まれると二度と帰ってくることはない。噂では化物がいるとかいないとか。
そしてその雨は、ここ最近現れたということもあり原因不明で発生源もわかっていなかった。しかしジェノアが持っている魔力のお陰で次に何処を襲うのかを早期発見し、住民を避難させていた。
「ふふふ、ギアール集団だよ。原因はわからないけど魔法を使っているみたいでな。すっかり雨が古の魔法の可能性忘れていたよ」
と、いうのも魔法が使えるのは王族の一部にしか現れない国王のみだ。だから、ダーリュには魔法の知識など無い。
「魔力を持った者が他にいる、という事か」
そうだな。とジェノアがニコニコ笑顔で答えた。
この男、ジェノアは正直に言って裏がわからない面倒な存在だった。いつも口角を上げ楽しげにしていれば、裏では飛んでも無いことを考えてたりする。幼馴染みでそれを知っているからこそ、ダーリュは彼の恐ろしさをしっていた。
「ねぇ、そういえばダーリュの彼女連れて来てよ。」
ジェノアの言葉でダーリュの眉間にシワが寄った。ダーリュは彼に一言も”彼女“の事は話していない。
「確か、アーリーって言うんだろ?おやおや、なんで知っているかって?」
むふふ、とたくみ笑いをするとジェノアは姿勢を前のめりにして足を組んだ。
「あの子、普通の渡り人ではないらしい。ギアールの奴らが血眼にして探しているよ。」
すると、ジェノアは「訳を知りたかったら連れてきな」とだけ残し奥へと消えていった。
ダーリュはその場に残されたまましばらく動かなかった。