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愛しい貴方に捧ぐ歌  作者: 中野理奈
少女と異世界
2/20

突然の異世界トリップ

湧き出す水、サワサワと風に揺られる木々。そんな平和なところで私は目を覚ました。


目覚めた瞬間の景色と言ったらそれはもう…!緑が輝く素晴らしい景色であった。だけど、頭が回転しはじめると私は恐怖に襲われた。


どこだ、ここは。


私の名前は、原野愛梨。日本生まれの高校2年で、家族は母と父と姉の4人家族。

……うん、どうやら頭は打っていないようだった。大体の基本項目を思い出すと、横たわっている体をおこし、服についた砂をはたく。


「さーてと、ほんとにどこなんだろう。」


生憎、混乱しすぎて驚きは少ない。だって、今ここはただの森らしいし。逆に空気が綺麗だ。


とりあえず、つったっているだけでは何も起きないと思われるので私は歩き出した。ありがた迷惑なことに荷物はすべて消えている。いや、全裸で倒れているよりはマシだ。



どこまでも続く道は案外早くにも終わり、周りの視界が木から開放された途端、目の前に繰り出されたのは賑やかな町ーではなく一面の田んぼであった。穏やかで、人気も少ないせいか私には寂しく感じるほどだった。


そんなところをまたポツポツと歩いていく。どう見ても人がいない。森から抜けてから、おそらく一時間以上はたったのに人気はゼロだ。

これはいくらなんでもおかしい。


「…おーい、誰かいませんか〜」


ある民家を訪れても人一人もいない。呼びかけても声が静粛に吸収される。


まいった、これではここがどこかもわからないままだ。


私は今いる民家を諦め、もう少し進んでみようと決意した後自分を励ました。するとーーー


カチャリ


首筋に冷たい何かが触れた。


ああ、なんだろう、この嫌な感じは。


体全身が拒絶してるかのように硬直し、息も正常にできなくなってくいる。しばらく経ってからか、耳元で囁かれる。


「お前、何者だ。」


声色が低く警戒しているようだったので、さらに体が動かなくなった。金縛りみないに動かなく、息がつまった。

私はとりあえず息を整え、そして声を発した。


「あ、愛梨です。原野愛梨。」

「ハ、ハラ…?変わった名前だな。しかし、なぜここにいる。ここは立ち入り禁止区域のはずだ。」

「立ち入り禁止区域?…そっか、だから人がいなかったのか。」


何かおかしいとおもったら、そういうことだったのか。

私は少し、状況を理解した。


「ここがこれからどうなるのか知っているのか。」

「い、いいえ。」


立ち入り禁止区域にしているほどだ。何かあるのはなるんだろうけど、何かまではさっぱりだった。


「娘よ、何も言わないから今すぐ立ち去れ。もうすぐ雨がやってくる。」


ん、雨……?


後ろからの声はなんだか緊迫したような声色だ。しかし、私にはわからない。ただの雨で立ち入り禁止にするなど初耳だ。


「雨ならここで雨宿りした方がいいんじゃないんですか?」


と、問いかけた瞬間いきなり後ろにひっくり返され、これでもかって言うぐらいに睨まれた。しかし、初めてみた姿に思わず吸い込まれた。


……綺麗な金色の瞳に、金色の髪…。



「お前…雨を知らないなんて、とんだ田舎者なのか?いや、田舎者でも知っているぞ。もしや、赤ん坊以下……。」


私が彼の姿にみとれていると、彼から哀れみの目で見られていた。

整った顔から想像もできない言葉が聞こえ、私は沸々と込があってくる怒りを抑えながらも静かに問いかける。


「………教えてもらっても?」

「………いいだろう。」


何とも言えないような顔をしてダーリュは民家から外へ出た。それにつづいて私も出る。すると、「あれを見ろ」と指が指しているところに、目を向けた。


「……雨雲…?」

「何も知らないんだな。」


隣ではぁーと盛大な溜息を音が聞こえた。


「あの黒い物体は化物だ。決して雨雲などという生ぬるいものではない。」


私はもう一度、空にかかる黒色の雲を見た。遠目だからか、彼のいう化物には見えない。

が、それがこちらに向かってきているとうことだけは理解した。

もし、あれが雨雲ならば。

こんなにも早くこちらに向かって来るはずがない。その速さは異常としか見受けられなかった。


「まずい、ますます速くなってきた。………………娘、走れ!」

「………はぃぃ!?え、うわぁっ!!」


彼は私の腕を引っ張り勢いよく“雨”と反対方向に駆け出した。

というか、彼は高身長だから足幅ひろいし、当然走るのも速い。すぐについていけなくなるのがわかったからか、彼は軽々と私を持ち上げ走り出した。しかも荷物を抱え込むような、乱暴に。




彼の荒れた息遣いが聞こえ始めると私の意識は一気に覚醒した。彼はいつの間にか歩いている。それに、私はというと走った記憶がない。多分、激しい揺れに耐えきれず意識を飛ばしてしまったのだろう。


「目覚めたか。娘」

「…苦し…」


私は手足をバタバタと動かせて暴れ、反抗を始める。すると、それが効いたのかあっさりと降ろしてくれた。と同時に、彼の肩で圧迫されていた肺が元にもどるのがわかった。


「“雨”は?」


私は黙々と歩く彼に尋ねた。


「……消えた。」

「そう、よかった。」


私は自分の命が助かったことに安堵した。やり残したことはいっぱいある。そして、一刻も早く家に帰りたい。


「……お前は、何者なんだ。」


彼は立ち止まって私の方に振り返った。睨むように眉間に皺を寄せ、顔を近付ける。日本人とは思えない透き通る金色の瞳が私を映した。


彼はイギリス系の人に似ていた。金髪の髪はポニーテールで後ろにまめられている。今で言うロン毛ってやつなんだけど、特別にこの人にはかっこよく見える。そして、服装は真っ白な軍服。胸元には飾りがジャラジャラしている。…まるで英国の騎士様だった。


「私は、日本から来た原野愛梨です。」

「……ニホン。知らんな。ここはアージェという国の中にあるエドワールというところだ。王都から離れた村だ。」


私は言われたことにショックを受けた。

……エドワールってなに。王都?なんだそれ。

声に出そうとしても声が出ない。


「………もしかして、異世界トリップってやつ!?」


でも、そのほうがこの状況の辻褄が合う。


「娘、話はあとにする。ついてこい。」


呆然と突っ立っている私の腕を引っ張るかのようにして歩き始める。


「とりあえず、皆と合流しなければ。」


彼は長い金色の髪をゆらしながら私を連れて歩いた。




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