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愛しい貴方に捧ぐ歌  作者: 中野理奈
聖女、とは
18/20

召喚の理由

「それからシュエルツとは会っていなかったが、本当にギアーノに送られていたは今実感しているところだ。定期的に報告はカインのところに上がっていたが、きっと違う人なんだろうと思っていた」


ダーリュは柵に持たれながら私の顔を見ないようにしている。


そっか、やっぱりダーリュには婚約者がいたんだ。

と、考えると胸の内がズキンと痛んだ。思わず、胸を押さえる。


「でも来てみて驚いた。髪は伸びっぱなし、服は継ぎ接ぎばかりで、昔のシュエルツの面影はほとんど無かった。けど、目とか薄い口を見れば一瞬だったよ」


ダーリュは手で顔を覆うと大きくため息をこぼした。

私はというと話を聞くだけで何もできずに彼の背中を見つめている。

手を伸ばし、彼の背中に触った。


「大丈夫だよ、シュエルツも自分でうまく消化してると思う。じゃないと、協力なんてしてくれないに決まってる。」


すると、ダーリュは私に微笑んだ。


「ありがとう」

「ううん、私はダーリュにいっぱい助けてもらったからね。お返しとはは言えないんだけど…私もダーリュの力になれば、と思ってる。」

「あぁ、アーリーはいっつもドジったり、やらかしたり、見てて飽きない」

「…………ねぇ、それほめてるつもり?」

「もちろん」


意地悪く笑うダーリュは珍しく歯を見せている。そのことにびっくりしながらも、私の頭をくしゃくしゃにする彼の手を受け止めた。

ダーリユが私の存在で少しでも笑ってくれたらいい。今みたいな笑顔をいつも見せてくれるようになればーー



するとドアの方から鎖を外す音が聞こえ、ダーリュは気配を消した。


「随分と待たせたな、娘よ」


シュエルツだと思っていた私は驚き後退りした。


「どうした、この前の威勢はどこ行ったのだ?…ふ、まぁよい。でろ」


召喚主である、ギアーノの王は牢の鍵に手をかざし鍵を魔法で開ける。ガチャン、と音を鳴らした牢は私の背の半分ぐらいの扉が少し開いた。


「なにグズグズしてるんだ、早く出ろ」


私は王の威圧に声が出ず、震える足に鞭を打ち牢から出た。さっきの楽しかったあの空気はどこへ行ったのだろうか。ダーリュも下手に出れず、身を隠している。


「わ、私に何するの」

「やっとお前が役立てる日が来たのだ、もう少し喜んだらどうだ?」


…はぁ?喜べ??

王の発言が理解できない私は頭の奥で何かが切れる音がした。


「役立てるとか、何するかわかんないのに喜べるかっ!まずは事前説明とかあるだろうに!なんて不親切なんだ!牢に閉じ込めるだけでも人権侵害だっての!!召喚主ぃ?王ぅ?何も許可取らず私を勝手に連れ出して何様よ。頭おっかしんじゃないの?私の世界で精神科行ってきなよ。その頭きっちり直してきな!!!」


はぁはぁ、と私の息遣いしか聞こえないこの部屋は一気に静まった。そして、私は自分のやったことに遅れて気づいた。


「……あ、え……っと」


よく、カッとなると行動に移してしまうのは私の悪い癖だった。そのせいか小さい頃友達と本気で喧嘩した時、はじめに手を出すのは私で、よく怒られたものだ。

…………だからと言っても、今回は本当にやらかした!!


王だよ??私を鍵とかなんとか言って拘束しちゃう極悪な王ですよ!?


私は“死”の文字が頭によぎった。


「物怖じもせず、大した性格だな。私が誰か知っていてその態度だろう?怒りを通り越し、呆れも通り越し、感動を覚える」

「ご、ごめんなさい…!勢いで、つい…!!」


王の目を見れず、ただ頭を下げた。

なんとしても許しを得なければ、ここから帰れる可能性もゼロになってしまう。それだけは避けたかった。


「あやつから説明は?」

「……あやつ?」

「シュエルツだ」

「あぁ、巨大な魔法の鍵が私だと聞いたけど…詳しいことは」

「だろうな、所詮私しか知らぬ魔法だから知る由もないだろう。……闇魔法は主に周りにある魔力を私自身に取り込み発生するものである。お前は私の魔力になってもらわなければいけないのだよ。だから、鍵だ。わかるな?」

「う、うん。一応?だけど、私には魔力なんてものは無い。私の住んでいる世界自体、魔法なんてものはお伽話しか存在していなかった」


アージュで聞いた光魔法、私はあの時初めて魔法を見たのだ。地球では物理学があり、すべての現象は何かしらの理由があり、分子というものが移動したりくっついたりしているのだ。それが簡単にいうと物の変化である。


「向こうの世界は魔法など存在していないことなど、とっくに知っている。向こうの世界は魔法という存在を出来ないと否定している。それが足かせとなり、魔法が使えないのだ。」

「つまり、思い込みがダメにしていると」

「そうだ。その代わり1人の魔力がすごく大きい。そのため、私は呼んだのだ。お前を」


王は指を私に向ける。

なるほど、とやっと理解することができた。なぜ召喚するのか、それはただ魔力を欲しがっているからだった。


「………じゃあ、私じゃなくて誰でも良かったってこと?」

「そうだ」


魔力ほしさに私が召喚された。だがそこには特に理由もなく、私だからこそというわけでもなかったのだ。もしかすると、私は地球で何気ない生活を送っていたかもしれないのだ。もう、ほとんど向こうの生活は記憶にないが。


王ははぁ、と溜息をつくと私の腕を引っ張り地下牢から出した。そのまま歩き続けどこかに連れて行くようだ。


「たまたまお前は歌という方法で体にある魔力を使い、闇魔法を無力化してきていた。それは私にとって誤算であった。」


ズンズン進んでいく王に小走りでついていくが、ショックによって何も考えられなかった。

私という存在が本当に必要とされているなら、まだ違ったかもしれない。しかし、今回はたまたま私を抜擢されただけであって誰でもいいのだ。そこになんとも言えない感情が複雑に絡めあっていた。


気づけばガシャンと鉄がぶつかり合うような音がして、はっと我にかえった。


「私はずっと、この時を待っていたのだ」


手首と足首は鉄の鎖で拘束されている。動くとガチャガチャと音を立て、力づくでは逃げられないようになっていた。


「この光景、いつぶりだろうか。やっと、やっと願いが叶うのだよ!!!」


王は気が狂ったかのように叫び、大きく口を開け笑い始めた。私はというと異様な光景に目を見開いた。

それに、この部屋。どこかで見覚えのあるような気がした。


「私に何するの!っ外しなさいよ!」

「外すわけ無いだろう。逃げられては失敗に終わってしまうではないか。私は何百年もこの時を待っていたんだよ」

「………っそんなの、知らないって!」


少し暴れ過ぎたのか、息が乱れていた。

手足を拘束しているこの鎖、自力で外すのは難しそうで逃げるにも逃げられないこの状況。何も考えられず、ただただ時間のみが進んでゆく。

しかし、ここで諦めるわけには……。

すると、また強烈な眠気に襲われだした。


「……な、んで……こんな時に……」


狂いだした王は私の変化に気づかず自分の世界にひたっている。

私は王の狂い笑いを横目に意識を闇に沈めていくのであった。




やっと、召喚された理由がきました!!

少し、時間が空いてしまったので不安が多々ありますが、よろしくお願いします!

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