5:情報
ピンポーン
この家に住み始めてから、一週間以上経った今日。
モラノがいないこの昼間の時間帯にインターホンがなった。
……。
でちゃ…ダメなんだよね。
部屋の隅で小さく体育座りをして、インターホンを鳴らす人が居なくなるまで待っていた。
しかし、十分経っても十五分経ってもインターホンが鳴り止む事がなかった。
「……なんなの?全く…」
やっと、インターホンが鳴り終わったと思うとガチャガチャとドアを開ける音がした。
「あ、なんだ…モラノかーーぁあ?」
玄関のドアを開けて部屋に入ってきたのモラノでは無く、赤い毛並みで左目に傷を負ったスーツを着た見るからに恐ろしい男の人だった。
私に気づかない様子で男は、部屋にづかづかと入ってきて、私を背にしてカーペットの上に胡座をかいた。
「ったく…あいつなんなんだよ。
ココに来ればわかるとかなんとか言いやがって」
ぶつくさ言いながらタバコを取り出し吸い始めた。
あまりの臭い匂いについ私は口に出してしまった。
「ココは禁煙室です!」
「あ?」
体ごと、こちらを振り向くとポカンと動きが止まった。
「あ」
やってしまった。
これは、あれだな。うん。
警察に電話されるとか?
「…モラノ、ロリコンだったのか」
私を指差したまま男は固まった。
「そう思います?」
「あぁ。お前もか?」
「はい!」
「気が合いますね!」
「気が合うな!」
二人で握手をした。
手は、大きくてゴツゴツとしていて、使い古されたような手だった。
「俺は小野裕司だ。
アヒャって呼んでくれ」
「アヒャ?了解!私はーー」
「あー知ってる知ってる」
私の言葉を遮りアヒャは、タバコを灰皿に入れた。
「しぃかってやつだろ?」
「おぉ。良く知ってますね!」
「ヒャヒャヒャヒャ!ニュースみてねぇのかよ」
「……そういえば、最近はバラエティしか見て無いですね」
昔からニュースや、教育番組しか見せてもらえなかったため、モラノの家のテレビは凄く新鮮味があって、楽しい。
「お前すげぇ有名だぞ」
「あぁ!他の人にはい、言わないで下さいね!」
アヒャは、笑うと親指を立てた。
ガチャガチャと、ドアをが開く音がした。
「ただいまー」
「おかえりー」
モラノが、帰ってきた。
モラノはアヒャを見るなり苦笑いをした。
「てんめっ。おめぇのせいで、俺が疑われたんだぞ?」
アヒャは、笑顔のまま眉間にしわを寄せて怒る。
「まぁまぁ。大丈夫だったろ?」
アヒャが、右手を振り上げ拳をモラノに向かって振り下ろした。
しかし、それをモラノは左手で抑えた。
「あ!おめぇ、今警察に喧嘩うったな? 」
「すぐ殴る警察なんて、嫌だろ。
て言うか、殺人鬼だって強いんだぞ?」
私は二人の会話に固まった。
二人はまだ、喧嘩見たいな事をしている。
「え?あ、あの。警察?え?」
「こいつは警察でも、俺を逮捕しに来たわけじゃあ無いから」
「そうなの?」
アヒャは、モラノから離れると不思議な笑い声をあげて笑った。
「モラノ。連続殺人と誘拐事件。犯人は違う人だと考えられてるぞ」
「そうか」
二人は座ると、警察の情報について話し始めた。
どうやら、アヒャはモラノに情報提供をしているらしい。
でも、アヒャに何のメリットがあるのだろう。
「ま、殺人もほどほどにな。んじゃ」
アヒャは、燃え尽きたタバコを灰皿ごと持って行き、台所に流すとさっさと帰って行った。
情報提供をだけのために、来たのだろうか…。
「……」
「どうしたの?」
「……いや。何でも無い」
モラノは、ドアを眺めていたが私が声をかけると眺めるのをやめてテレビをつけた。
「ねぇねぇ。私さー。暇なんだよー」
「……だからどうしろと?」
「あーそーぼー」
「嫌だ」
「ギャピンッ」
私のおねだりを即答して、モラノはテレビを見始めた。
「ねぇねぇねぇねぇ。ちょーっとゲームするだけで良いからさー?ね?」
モラノは、ため息をつくとテレビを消してこちらを振り向いた。
「何やるんだよ?」
「ありがとう!!」
思わずギュッと抱きついてしまった。
ヤバイ、と思って離れるとモラノも驚いたような顔をしたが、すぐにいつものしかめっ面に戻った。
ほら、ね、流石に男性に抱きつけばね、恥ずかしさもあるもので、少しだけ頬が赤くなった。
「じゃあね、じゃあね、コレー!」
ゲームのカセットを高く掲げてゲーム機に差し込んだ。
「これか…。懐かしいチョイスだな」
「やった事無いからやるの!」
「ふーん」