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10:新鮮な雰囲気

布団から起き上がると、ズキズキと刺すような痛みが頭を襲う。

頭を抑えて眉をひそめた。


「うぅー…」


「おはー!!」


「ひゃあっ!!」


頭を抑えていた私の目の前にアヒャが顔を出す。

……何でいるんだ?


「おは…ようございます。ってなんでいるんですか?」


「ヒャ?昨日の事覚えて無いのか?」


昨日何か私したかな…。

痛い頭をフル回転して見せたが、何も思いつかず首を横に降る。

アヒャは、意地悪そうにニヤニヤと笑う。


「何か…しましたか?」


「ヒャヒャヒャ。何もして無いよーってな」


アヒャは、頭の後ろに手を組んで玄関に歩いて行った。


「え?ちょっ!?どゆことですか?」


アヒャヒャヒャ、と不気味な笑い声を残してアヒャは家を出て行ってしまった。

布団から這い出ると、リビングのテーブルでモラノが寝ていた。

掛け布団を一枚モラノの背中にかけると私は朝食をとるために台所に歩き、冷蔵庫を開けた。


「あー…。何も無いなぁ…。

どうしよ…。買いに行きたいけど……そうだ!」


リビングで寝ているモラノのそばに置き手紙を置き、コートを羽織り犬の被り物を頭に被る。

視界が多少悪くなったけれど他の人に顔を見られず、買い物出来るのは気分が良い。




久しぶりの外。

久しぶりのお店。

その全てがとても新鮮味があり楽しい。

片手に食品が入っているビニール袋を持ち歩道を歩く。

みんなからの視線が痛いけど、バレないためには仕方が無い。

路地裏にさしかかったところで手を引かれ、人通りの少ない通路に連れ込まれた。




ふと目を覚ますと、背中に暖かい感触と冷たい空気が頬を掠めた。

上半身を起き上がらせると、腰がずきりと痛んだ。

変な体制で寝たから腰が痛くなったのだろう。

背中にかかっていた布団を羽織ったまま、目の前に置いてあった置き手紙を読んだ。

瞬間、顔が引きつって行くのがわかった。

頭で結論を出す前に俺は走っていた。




…っくそ。

あいつ。バレたら終わりだって前に行ったじゃねぇか。


「行き先ぐらい書いていけよ!」


路地裏から、人通りの多い道に出ようとした時のんびりと歩いているガキを見つけた。

しかし、反対車線にいるためここからじゃ遠い。

人通りの多い道に出て、横断歩道を渡ろうとした時路地裏から手がするりと出てきてガキの腕を掴み引っ張ると、ガキはフラリと転ぶように路地裏に入った。


「……最悪だ…」


警察だったら、それはもう最悪だ。

急いで横断歩道を渡り路地裏に入ると、あまり最悪で無い展開で俺はホッと一息ついた。


「あ!モーラーノ!助けてー!」


「……」


ガキをナンパしようとしたのか何なのかわからないが、ガキに壁ドンをしている一人の男が居た。

赤茶色の毛色でつり上がった目をしていた。

男の足元には犬の被り物が落ちていてガキの素顔が出ていた。

俺はバカらしい光景に帰りたくなったが、ここで帰ったら意味が無い。


「あ!テメェ!この間の…」


俺の事を指差し男はガキから離れた。


「忘れたとは言わせねぇぞ!この間、俺の事を殴っただろ!」


「……人違いじゃねぇか?」


全くもって記憶に無い。

むしろ、こんなガキが好きそうな奴なら記憶に残りそうだが、全くもって記憶に無い。


「この間、俺がお前にカツアゲしようとしたらテメェが殴りかかってきただろ」


「あぁ。どちらにしろ、それってお前が悪いだろ」


図星だったのか、それとも逆鱗に触れたのか男はガキの首元にポッケから取り出した折りたたみナイフを近づけた。


「俺に謝ればこいつは、殺さないでやるよ!」


……弱い奴ほど喚くって聞いたが、まさしくその通りだな。

ガキの方を見るとよほど強く首を抑えられているのか右手に持っているビニール袋をどさっと音を立てて落とした。


「はぁ…すいませんでしたー」


棒読みまじりに言っただけで、優越感を得たのか、また何か言ってきた。


「土下座土下座。土下座しねぇと、許さねぇぞ」


「っ…!」


ガキの首筋から血が流れて茶色のコースに少しだけ赤色がついた。

俺は、ここで死なれるは癪に触るし何より後五年家に置くと言う約束をしてしまったためにここでガキが死んだら約束が果たせない。

仕方が無く地面に頭をつけた。


「迷惑かけて、すいませんでした」


俺自身なんで、こんな事をしたかわからない。

正直あんな男に殺せる訳が無いじゃないか。

男はケラケラと大笑いをした。

俺が立ち上がっても男は大笑いをやめない。

その隙を見て、男のナイフを奪う。


「っな!!」


そのままナイフを首に刺す。


「悪いけどさ。顔を見られたからには、生きて帰せないんだよ。相手を間違えたな」


刺された場所から、空気の漏れる音がする。

口からも、喉からも赤黒い血がボタリボタリと垂れる。

ナイフを抜き、もう一度首に刺してからナイフをたたみ自分のポッケにしまい、ガキを右手で引っ張る。

ガキは犬の被り物を急いで被るとフラフラとした足取りでついてくる。

左手は、血で赤黒く染まっているため上着のポケットにいれて隠す。





「このっドアホ!!」


「うぅ…」


家に帰ってすぐ俺はガキに言った。

靴を脱ぎ手を洗うと流し台が赤色に染まったが、すぐ排水溝に流れていく。


「あのな…出かける時は俺も連れてけ。または、アヒャを呼べ。

わかったか?」


「う…うん…ご、めんね」


しどろもどろに言った。

俺の様子を気にするようにチラチラとこちらを見てくる。

反省しているのだろうか。


「とりあえず、休めよ。

久しぶりに外に出て疲れたろ?」


「え?あ、うん」


そう言うと、コートを脱いでカーペットの上に座った。

俺はビニール袋の中身の物を整理して、ガキの隣に座った。

普段ならココで会話が始まるが、今日はいろいろあったせいか、口は閉ざされていた。


「今日夕飯何食うか?」


「え?……オムライス」


「それ、飽きたんだろ?

他のも作れるから言えよ」


ううん、とガキは首を振る。


「今日は、それが食べたい」


ニコリと笑顔をこちらに見せた。

俺もつられて少しだけ口角を上にあげた。


「そうか」


「……っていうかさー。

モラノ慰める時のレパートリー毎回夕飯?」


「な、慰めてるわけじゃねぇよ。

ただ、今日は飯が不味くなるから変わってやるだけだ!」


ふふん、と鼻を鳴らされた。

上目遣いに挑発するように笑う。


「本当っかなー?」


「っるせぇな」


「あ!いひゃい!!んもー!にゃんでみゃいかい、つねるのー!?(痛い!んもー!なんで毎回つねるのー!?)」


いつもより少しだけ強く頬をつねったので、離すと少しだけ赤くなっていた。

ガキと話していたが、頭の中のは別の事を心配していた。



今回の事で。

俺の足がつかなきゃ良いんだが。



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