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1:ゴミと彼と私と

前作の長編〈神とクズ〉を見て頂けた方がしっくりくる場合もございます。

秋の下旬だからか、夜はかなり冷える。

コートにジーパンと言う適当な格好で歩くには少しだけ肌寒い。

はぁ、と小さくため息を吐くと白い息になった。

私は頭の上に生えたピンク色の耳をピクピク動かした。

誰かが歩いてくる音がする。

目の前にはゴミ捨て場。

周りは塀がある。

音がするとしたら、目の前の先か、左の曲がり角の先からか。

知らない人で有ることを祈り、私はフードを被った。

フードは、目元まで深く被ったので周りの景色が殆ど遮断された。

生臭い嫌な匂いが鼻に届く。

あまりにも臭いので鼻を指で摘まんだ。

それでも少しだけ匂いは来る。

匂いの元が気になり少しだけ目線をあげて、目元がフードに被らない程度まであげた。

そこには、白いワイシャツに黒いズボンを履いている、黄色い毛並みの人だった。

彼は黒く、パンパンになっているビニールを軍手で両手いっぱいに持っている。


「あ…」


彼は気まずそうに頬を引きつらせた。

それはそうかもしれない。

十五歳の女子がこんなところで、しかも夜中に立ち止まっていたら、不信感をだくだろう。

私から目を背けると、私の目の前のゴミ捨て場にゴミを捨てるとさっき来た道を戻った。

彼が振り向かない事を確認すると、ゴミ袋の中身をあけた。

今日は、生ゴミの日だったけ?

そう思い軽い気持ちで漁った。

しかし、中から出て来たのはとても見慣れない物で、口の中が一瞬酸っぱくなるのがわかった。

急いで袋を閉じると、深く深呼吸をし彼についていった。

ほんの興味心と、ほんの微かな望みを託して。




なんだろう。

俺何かしたかな。

先ほど見た、明らかに不気味な少女

が俺の後ろを隠れながらついてきている。

本人は、隠れているのだろうけど…。

立ち止まって、後ろを振り向くとサッと電柱に隠れる。

しかし、電柱から薄ピンク色の綺麗な耳と長い尻尾が出ていて、バレバレだし、街灯の明かりのせいで影がもろ見えている。


「………」


また前を向き歩き始めると、足音が聞こえてきて、ついてくる。

本当になんなんだ?コレ。

家を知られたくなくて遠回りして帰ろうなどと考えているうちに、足はいつの間にか家へと向かっていて、古いアパートの玄関の前に立っていた。


「……はぁ……ん?」


俯いていた顔を上げると、少女は俺の玄関のドアをガチャガチャと開けようとしていた。

鍵が閉まっているので、ドアはびくともしない。

フードを脱いだ状態でクルンと顔だけこちらに向けると、ニコやかに、鍵は?、と言った。

その笑顔につられてつい、鍵を開けてしまった後に後悔した。

少女は、家に勝手に入るや否や、靴を脱ぎ、ヒーターをつけくつろぎ始めた。


「……おい。なんなんだ?

ストーカーかよ」


「え?私がストーカー?……。

いやいや。ただの通りすがりの少女ですが?」


「……」


なんで、通りすがりの奴が家まで上がってくるんだ。

その文句を口に出さず心で呟いた。

俺はまた頭を抱えた。

これは、俺が誘拐したみたいな風になって、濡れ衣きせられるやつか…!


「お前が誰だか、しらねぇけどよ…とりあえず、帰っ」


「あ、私 神島椎華(かみじましぃか)しぃでも、しぃかでもなんでも良いよー」


話を聞け…。


「そっちは?」


ストーブの近くに座っていたしぃかが、こちらを見てニコリと笑った。

笑った顔は可愛いが、俺はロリコンでも無いから、その笑顔にキュンと来ることは無かった。


「はぁ……とりあえず帰れよ。親御さんが心配してるぞ」


しぃかの問いかけを無視して話すと、しぃかは少し眉をひそめた。


「……心配しないもん。

だから、良いの。私がどこで何をしようと、私の勝手。

私の自由なの」


とんだワガママ娘だよ…。

多分家出か、何かしたのだろう。

俺は、立っているのもあれなのでしぃかの横に座った。

ストーブの熱が体に当たり、冷え切った体を温めてくれた。


「あのなぁ。心配しない、親なんていねぇから。

ほら、子供は夜遊びすんなって」


しぃかは、頬を膨らませた。


「うぎぎぎ…子供扱い…!

ふ、ふん。なんでも良いわよ。

とりあえず、私は家出したの!

分かる?い、え、で!

だから、この家に居候させてくれたら嬉しいな?」


最初は、怒ったように話していたが後半から甘えたような声を出してきた。

これはめんどくさい事になった。

居候?俺の家に?

しかも、俺男だぞ?

頭おかしくなってんのか?


「……嫌だ。

何で俺がお前なんかのために住む場所を提供してやんなきゃ、いけねぇんだ?」


俺の言葉を予想していたのか、ふふんと鼻を鳴らして笑うと、自信満々に俺の顔の前に人差し指を出した。


「断っちゃって良いのかなぁ?

私、貴方の弱み持ってるんだけど…なぁ?

他の人に言っちゃおうかなぁ?」


妙に間延びした、甘ったるい口調で挑発するように言う。


「……弱みってなんだよ」


「えー?言っちゃうよ?」


人差し指を引っ込めニヤニヤと笑った。

なんとなく、嫌な気分になり暑くも無いのに嫌な汗が背中から流れていくのが分かる。


「は、はやく言えよ」


俺の事を指差して、しぃかは言った。


「今日のゴミ。あれ、人だよね」





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